スイス企業がベトナムを投資先に選ぶ理由とは

1999年5月11日に設立された在ベトナムスイスビジネス協会は、ボランティアによって運営されている、非政府・非政治・非営利の組織だ。同協会は発足以降、経済、社会、文化活動などにおける貢献を目指して、スイス人だけでなく、スイスに関係のある人や興味のある人のコミュニティに重要な役割を果たしてきた。同協会のジャン・ポール・へーシング会長は、ベトナム経済ニュースの取材に対し、「地域的、国際的な危機に対するベトナムの素晴らしい対応が、投資やビジネスを行う場所としての魅力を高めている」と述べた。

―現在、スイス企業がベトナムで最も注目している分野と今後注目されるであろう部門は何ですか。

「ベトナムは1990年代に市場経済化されたが、スイス企業ではネスレ、ロシュ、ホルシム、シンドラーがいち早く進出した。現在は約140のスイス企業が、ベトナムで事業を行っている。現状、スイスはベトナムで19番目の投資国であり、総投資額は22億ドル(約2,500億円)。技術やイノベーション、資本のほか、金融や製薬、食品製造の分野に強いスイスの投資家は、コロナ後のビジネスにおいて、ベトナムを魅力的な投資先として注目するだろう」

―新型コロナウイルスの感染拡大は、投資先としてのベトナムにどのような影響を与えましたか。

「ベトナム政府のパンデミックへの対応は、その大部分は的確であり、ASEANで最も魅力的な投資先の1つとしての地位をさらに強化した。加えて、アジア通貨危機や世界金融危機、パンデミックが発生する中で、毎年成長を続けてきたベトナムの経済運営は他の追随を許さない」

―スイスの中小企業にとって、ベトナムが理想的な投資先となる要因は何ですか。

「有利な投資政策、費用対効果の高い生産的な労働力、主要輸出先への地理的な近さといった競争上の優位性とともに、彼らが提供する製品・サービスにも魅力的な市場だとみなしている。こうしたスイスの中小企業にとって、ベトナムは理想的な場所となるだろう」

―人材面で、スイス企業のニーズは満たされていますか。

「ベトナムには豊富な労働資源があるが、優秀で経験豊富な人材はいまだ不足している。そのため、大部分のFDI投資家は、従業員の大規模なトレーニング(一時的な海外派遣も含む)を行い、必要なスキルと経験を自社内で習得させている」

―ベトナムのパンデミックへの対応について、お考えをお聞かせください。

「ベトナム政府の包括的な目標は、限られた医療資源の中で、パンデミックを抑制することにある。そのために企業は犠牲を払い、厳しい規制に従わなければならないことを理解している。同時に、国民や国の経済的苦境を最小限にとどめるためには、経済を回し続けることが重要だ。この目標のために、政府は経済の中心地や都市部でのワクチン接種を優先し、接種を大幅に推進した結果、最近の「コロナとの共生」への戦略転換が可能になった」

―では、ワクチン接種が最も重要だということですか。世界経済が正常に戻るのはいつ頃になると思いますか。

「ワクチン接種は、正常化させるための唯一の現実的な手段だ。ベトナムは2021年の年末までに、人口の70%が2回目の接種を終える予定であり、現在順調に進んでいる。高い接種率の大部分の国では、この数カ月の間に正常の経済活動を回復することができている。しかし、半導体チップや労働力、エネルギーなどの不足、サプライチェーンの寸断など、世界規模の混乱は続いており、その解決には時間がかかるため、2022年の成長は鈍化するだろう」

―協会の将来の方向性を教えてください。

「スイスビジネス協会は、スイス大使館や総領事館と協力して、様々なニーズに応じたイベントを開催して新規会員を獲得するという、設立当初からの活動を続けていきます」