2022年の経済成長に明るい見通し 農業や金融には課題 専門家らが分析

2021年の目標こそ達成できなかったが、経済の専門家や国際機関などは、2022年のベトナム経済について、製造業や貿易収支の回復など、成長の重要な基盤となりうる要素を複数挙げ、回復について楽観的な見通しを示している。だが好調な外資系企業とは対照的に国内企業は伸び悩んでおり、農業などの基盤産業や金融分野などでは課題もありそうだ。

◇明るい見通し
ベトナム計画投資省統計総局のグエン・ビック・ラム元局長は、ベトナム経済第一の明るい要素として、「新型コロナウイルスの感染拡大がもたらしたさまざまな困難に直面しても、ダイナミックに、柔軟に対応してきたベトナム経済界こそが強みだ」と語る。2021年1~11月、ベトナムでは約10万5600社の新規創業が当局に登録されたのに加え、一時操業を停止していた4万9500社が操業を再開した。これで、昨年11月までの総企業数は14万6100社となった。

第二は、外国直接投資(FDI)だ。昨年1~11月の1年弱で、ベトナムは海外から264億6000万ドルの資金を誘致し、年間の数字でもFDIは2020年と並ぶ約300億ドルに達する見込みだ。

第三の明るい見通しとして、ベトナムの国際貿易における地位向上が挙げられる。輸入原材料、輸送費、物流などの面で世界各地の製造業者や輸出業者に課題を突き付けることとなったサプライチェーンの寸断にもかかわらず、昨年1~11月、ベトナムの輸出利益は前年同期比17.5%増2996億7000万ドルとなった。一方の輸入品も、同27.5%増の約2994億5000万ドルだった。

なかでも、ベトナム製造業の活性化につながるさまざまな部品や原材料などの輸入は、前年同期比で27.9%増えて約2802億ドルに達し、ベトナムの総輸入額の93.6%を占めた。さらに「新型コロナの状況によって、1~9月は37億ドルの赤字だった貿易収支は、11月末には2億2500万ドルの貿易黒字に転換できた」とラム元局長はと付け加える。

◇経済推進に課題も
2021年10月に発表された国際通貨基金(IMF)の世界経済予想では、2022年のベトナムの経済は、6.6%の成長率を実現する可能性があるとされた。調査対象国(タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア)の中でもっとも高い成長予測となった。また、スタンダードチャータード銀行は、2022年の予想として、2022年のベトナムのGDP成長率が「7%に達する見込みである」として、ベトナム経済の成長と回復について、楽観的な見方を示している。

チャン・クオック・フオン計画投資副大臣は、2022~2023年にかけてのベトナムの社会経済の回復・発展計画について、「経済を需給の両面から支援し、財政・金融政策や、10カ年、5カ年の社会経済発展戦略、公共投資計画、経済再構築計画などに呼応しつつ、柔軟に実施される見通しだ」と話す。

ベトナム国会は、2021~2025にかけての景気回復計画を承認したが、これは、経済回復の実現とその加速のために、国内外の資源を誘致する重要な原動力となっているとフオン副大臣は話す。

今年のベトナム経済の成長はまだまだ余地があり、今後数年間はその傾向が続く可能性はあるが、一方では、ベトナム経済はまだ欠陥を抱えている。例えば、操業を停止する企業の多さや、1~11月の目標数値の73.8%しか達成できず、前年同期比8.7%減となった公共投資の遅れなどがその代表例だ。2996億7000万ドルを達成し、一見すばらしい数値に見える総輸出額も、国内企業は全体の26.4%の790億ドルに過ぎず、その成長率も11.1%と、外資系企業の20%という成長率と比べると低調だ。これらはすべて、ベトナムの経済が概して系資本と外国直接投資によって支えられていることを示している。

また、ベトナムの経済発展の原動力となるはずの農業や漁業は、依然として多くの困難に直面している。

これらのことを考慮したうえで、経済の専門家らは、新型コロナの制御や、企業の優遇措置の実現とともに、ベトナムは調和のとれた複数の金融政策を組み合わせて具体化していくことが必要だと指摘する。