オミクロン拡大、繊維業界が描く3つの輸出シナリオ

ベトナム繊維アパレル協会(VITAS)のチュオン・ヴァン・カム副会長は、ベトナム経済ニュースの取材に対し、「予測不可能なオミクロン株による影響を考慮し、2022年における繊維業界の3つの輸出シナリオを策定した」と明らかにした。

写真㊤=チュオン・ヴァン・カム副会長

―2021年、ベトナム経済は多くの浮き沈みや困難を経験しました。繊維・衣料品業界にとっては、どのような1年でしたか。

「2021年は本当に大変な一年だった。第1四半期は、長期契約があったため多くの企業はまだ仕事を抱えていたが、第2四半期には北部で、第3四半期にはホーチミンと南部の省や市で感染が拡大し、生産がほぼ停止した。第3四半期の輸出額は引き続き減少している。生産が回復し始めたのは、新型コロナウイルス感染対策のより柔軟な基準が示された政府決議128号(128/NQ-CP)が発出された10月になってからだ」

「生産の回復によって、2021年の繊維・衣料品業界の輸出額は、2019年と同等の390億ドル(約4兆5000億円)となり、当初の予測を上回った。依然最大の輸出市場である米国への輸出額は159億ドル(約1兆8000億円)で、前年比で12%増加した。EU、韓国、中国への輸出額は、それぞれ37億ドル(約4300億円)、36億ドル(約4200億円)、44億ドル(約5100億円)だった。CPTPP加盟国への輸出額は、2020年の52億8800万ドル(約6100億円)に対し、51億1000万ドル(約5900億円)でやや減少した」

「繊維・衣料品業界において、外資系企業の輸出割合は59~61%であり、これまでの投資資本総額は約329億ドル(約3兆8000億円)である」

―南部で感染が広がった際に、一部の輸出注文は第三国へシフトしました。これはどの程度起こったのでしょうか。これらの注文が、再びベトナムに戻る兆しはあるのでしょうか。

「統計によると、地域の繊維業界の労働者の60%を占める最大120万人の労働者が、最長で2~3カ月間、工場で働くことができなかった。そのためにパートナー企業は、季節性などを維持するために、注文を他国に移さざるを得なかった。しかし、企業の生産が再開すれば、(ベトナムの製品は)仕上がりが良く評価も高いため、オーダーは戻ってくるだろう。現在、多くの国内の繊維・衣料品企業は、4月や5月分までの受注を得ており、これは顧客の国内企業に対する評価の現れだろう」


国内の繊維・衣料品企業は、今年4~5月分までの受注を獲得している

―変異型のオミクロン株の急速な拡大は、世界の繊維市場にどのような影響を与えますか。生産チェーンを崩壊させないためには、どうすれば良いですか。

「オミクロン株の急速な拡大を考えると、最も重要なのは中央と地方の国家機関がスムーズに連携し、以前のように生産と事業展開に支障をきたさないようにすることだ」

「当協会では、2022年の輸出目標に関して3つのシナリオを描いている。まず、パンデミックが今年初頭に大よそ収束した場合、輸出目標は425億~435億ドル(約4兆9000億~5兆円)とかなり野心的に設定した。今年半ばの収束であれば、輸出目標は約400億~410億ドル(約4兆6000億~4兆7000億円)。そして最も悪いシナリオだが、パンデミックが年末までに収束しなければ、380億~390億ドル(約4兆4000億~4兆5000億円)になるとみている。ただ、どのようなシナリオであれ、企業の努力とともに、感染対策やワクチン接種の進捗がカギを握る」

「政府は最近、大規模なフォーラムで専門家らに意見を聞き、財政・金融政策を策定したが、こうした連携は企業の回復と成長の大きな支えとなる。ウィズコロナの状況では、工場で感染者が発生する可能性があり、自治体と共同で対処に当たるといった支援が必要だ」

―新型コロナウイルスの感染拡大は、原材料のサプライチェーンの混乱を招き、改めて原材料の国内自給が急務であることを認識させられました。今年はこの問題にどのように対処していくのでしょうか。

「2020年には、原材料の50~60%を中国からの輸入に頼っていたことで、原材料の供給が途絶えるという経験した。輸入原材料への依存は難しい問題で、長年解決されていないボトルネックである。この問題を解決するには、国の関与が必要だ。繊維・衣料品産業の開発戦略では、大規模な工業団地の建設、環境問題を緩和するための集中的な廃水処理区域の設置を盛り込むともに、投資家、特に海外投資家を誘致する必要がある」

「繊維・衣料品産業の開発戦略は現在、商工省で最終案が策定中で、まもなく政府に提出され承認される予定だ。承認された戦略が、川上の段階も含めた業界の発展の基盤となることを期待している」