ベトナムの科学技術と改革を促進 10カ年社会開発戦略などが後押し

2021年に採択されたベトナムの10カ年間の社会開発戦略では、ベトナムが2030年までに近代的な産業を獲得し、発展途上国のなかでも所得層が中の上となることを目指し、さらには2045年には高所得先進国になることを目標に掲げている。この戦略のなかでも、経済成長の主な原動力と位置付けられている三本柱が「科学・技術・イノベーション(STI)」の進展だ。

◇重要な企業の役割
ヒュイン・タイン・ダット科学技術相によると、科学技術省(MoST)は承認のため、「科学技術関連法」を含む5件の法案を国会に提案登録しているという。このうち、「2021~2030年の社会開発戦略」草案では、STIの発展について、「経済成長を促進し、生産性、品質、効率、競争力を高め、迅速かつ持続可能な社会経済発展のための戦略的ブレークスルーをもたらす」と確信している。

科学技術省傘下にあるベトナム科学技術アカデミー(VAST)ホアン・ミン所長によると、この戦略は、社会経済発展に役立てるために科学技術を動員することを目指しているといい、そのなかで企業が中心的な役割を果たしていくという。科学技術によって新たな知識を生み、改革によって知識を有用な製品や商品、サービスなどに変えることが、現代社会の潮流だ。

この10年間の具体的な目標としては、科学技術における全要素生産性(TFP、労働の増加に起因しない生産増加)を45~50%にまで引き上げるほか、製造加工業の製品価値の少なくとも45%を科学技術分野で占めるようにする考えだ。また、科学技術への投資についても、2030年までにGDPの1.5~2%にまで引き上げることを目指す。

産業や農業、サービスにおける改革の実現は、国内外のバリューチェーンと結びついており、大企業は生産などをけん引する中心的役割を果たす。一方の公的機関については、ベトナム科学技術アカデミーのミン所長は「良好な制度的環境や政策をつくり出し、企業や生産集団、大学などの研究機関を結びつけ、競争力と経済効率を向上させるための研究や実用化を促すことだ」と話す。

◇商品化の推進を
ベトナム科学技術アカデミーは、「さまざま改革を成功させるためには、それを主導する者が革新的な思想家でなければならない」としている。また、革新的なミッションの成果は、商品化を促し、技術の価値を高めるために、常に知的所有権と関連付けていくことが必要だ。

そこでアカデミーが主張するのが、首相を議長とした「国家イノベーション評議会」の設立だ。研究機関や大学から派生する起業などを支援するためのベンチャーキャピタルの設立や、大学や大規模研究機関での特殊技術の商品化試験の実施などの必要性も指摘されている。

ハノイ国家大学のレ・クアン学長は、産業や、国家の課題や、国際的地域的な問題点を協力して解決するためには、「STI分野での開発における協力が必要で、研究は社会的ニーズに結びつけられる必要がある」と指摘する。今後、周辺関係者らは改革を推進するために、技術革新における企業支援に焦点を当てて、科学技術における官民協力を目指す必要があるという。

一方、ベトナム島北部バッカン省で、廃棄物処理炉やウコンクルクミン抽出機などの独占的な特許技術をはじめ、数十種類もの有用な発明をしてきた、チン・ディン・ナン氏は、「STIを伸展させるためにも、国家は、個人の発明家や技術者に対しても研究支援をしてほしい」と要望。製品開発のための資金提供や政策面での支援の必要性も指摘する。

そのようなバックアップを展開することで、科学技術業界では、2030年までに、科学技術事業を展開する企業と革新的新興企業数の倍増や、イノベーションに従事する企業割合を企業全体の40%にまで増やすことを目指している。