2021年のベトナムのGDP成長率は2.58%と低水準だったが、多くの金融機関やエコノミストらによると、2022年は、国がゼロコロナ政策から「柔軟な感染対策」へシフトしていることで、成長率の回復が期待されるという。

写真㊤=公共投資は引き続き促進する

◇楽観的予測
最新の「アジア経済見通し(Asian Development Outlook Supplement)」によると、2022年の成長率は6.5%に達するとの予測で、ワクチン接種の普及によってGDPの成長はさらに加速する可能性がある。また、香港上海銀行(HSBC)のグローバル・リサーチは、2022年、ベトナムはFDIの増加を受けて6.8%成長するとみている。HSBCベトナムのティム・エバンスCEOによると、「規制緩和による内需の回復で、11月のコア・インフレ率は0.11%アップし、前年比では0.58%の上昇となったが、当局が定めた目標範囲内に収まっている」とのことだ。

HSBCによると、中間層の継続的な拡大、特に富裕層の拡大がカギで、レジャーや旅行にますます支出するようになり、消費に変化をもたらすという。また、新しいインフラ事業が、ベトナム経済を活発化させることも期待される。

ベトナム経済の見通しについて、世界銀行リードエコノミスト・ベトナムプログラムリーダーのジャック・モリセ氏は、成長を可能にする3つの新しい要因を指摘した。

まず1つ目は、新型コロナウイルスのパンデミックによって、間接的にだがベトナムが、サプライチェーンの多様化を求める多くの海外の大企業にとって信頼性のある国となったこと。2つ目は、グリーン経済への志向がもたらすチャンスを活用できること。ベトナムは、気候変動の影響を最も受ける国の1つだが、この状況をソリューションの開発に生かすことができる。

3つ目は、中間層の増加がもたらす国内需要。モリセット氏は、「世界銀行は、2045年までに高所得国になるというベトナムの野心的な目標を達成するために、引き続きサポートを行っていく」と明言した。

また、エコノミストのヴォ・チー・タイン氏は、「パンデミックと世界経済の成長力が、2022年のベトナムの経済成長に影響を与えるだろう」と述べた。そして、「政府主導の経済回復政策は、財政政策が重要な役目を果たすよう、経済の主要セクターに焦点を当てなければならない。短期的な財政赤字は、財政力を強化するためには許容されるかもしれない」と語った。タイン氏は、政府はパンデミックを、改革や新しい政策を実施する機会にすべきで、生産性やビジネス環境を改善し、イノベーションやスタートアップカルチャーを加速すべきだと呼びかけた。そして、政府が継続して、広範囲にわたる支援を実施することは、経済回復の重要な原動力になるとした。

◇成長の原動力
パンデミックは、オミクロン株といった変異型の出現の予測が難しく、2022年には収束しない可能性があり、国会で設定した6~6.5%の成長目標が課題となっている。ベトナム統計総局のグエン・ティ・フオン局長は、「2022年の経済成長は、国のニューノーマルへの適応により2021年に比べて改善するだろう。今年の経済成長の原動力となるのは、2011~20年期の社会経済面での成果とFDI企業による後押し、マクロ経済の安定のほか、より柔軟で効果的な財政・金融政策の運用を容易にする安定した主要経済のバランスなどである」と話す。


2021年の金融市場は、基本的に安定的に推移した

財政・金融政策に基づく支援策を盛り込んだコロナ後の経済発展・復興政策は、企業にとっては、生産・貿易活動を迅速に安定化させ、回復させる機会となる。フオン氏は、「ベトナムのワクチンの2回接種率は比較的高いため、内需は徐々に回復し、増加するだろう」との見通しを示した。

また、公共投資法の最近の改正は、プロセスのスピード化、手続きの簡素化、公共投資の支払いの迅速化によって、投資の改善を促すとみられている。

そのほか、ベトナムの主要貿易相手国は急速な回復傾向にあり、貿易をより強力に促進している。EVFTAやCPTPPは、ベトナムの貿易・投資活動をより大きな市場に導くと期待されている。

エコノミストは、「2022年から23年に向けて、ベトナムにはかなり強力で長期的な経済回復政策が必要であり、すべての段階で、適切かつ効果的にそれらを実施すべきである」と述べている。