GDP成長目標達成に向けて、ベトナム経済躍進のカギは

エコノミストらは、2021年第4四半期における経済の好調な要素を踏まえて、新型コロナウイルスの影響下においても、2022年のGDP成長率目標である6~6.5%は達成できるとの見通しを示している。

写真㊤=ベトナムは新型コロナウイルスの集団ワクチン接種を引き続き加速する

ベトナムのGDPは、2021年第4四半期に5.22%成長し、通年の成長率は2.58%だった。当初の目標値よりは大幅に下回ったが、エコノミストらは、「2021年の成長率は新型コロナの影響下では満足できる結果で、2022年と翌23年には経済が迅速に回復する道が開けるだろう」と分析する。

ベトナム統計総局のグエン・ティ・フオン局長によると、ベトナムは2020年と21年にプラス成長を維持した世界でも数少ない国の1つだ。中央経済管理研究所(CIEM)の前所長であるレ・ダン・ドアン博士は、「ベトナムは、ホーチミン市やビンズオン省、バクニン省、バクザン省といった経済の中心地や製造拠点が新型コロナの影響をダイレクトに受け、サプライチェーンが混乱するといった非常に困難な状況にあったが、2.58%の成長を遂げることができた。ベトナムがプラス成長を維持したことは賞賛に値する」と評価した。

2021年のベトナム経済には明るい要素が多々あった。対外貿易額は、前年比23%増の約6700億ドル(約77兆7000億円)に達した。輸出額は3360億ドル(約38兆9000億円)を超え、前年比で19%増加。6年連続の貿易黒字となり、黒字額は約40億ドル(約4600億円)だった。ベトナムは国際貿易額で世界トップ20に入る経済国となった。

◇投資家の信頼
外国直接投資(FDI)の成果も、2021年のベトナム経済の明るい要素だ。新規登録資本金、進行中のプロジェクトの増資、株式購入の総額は、311億5000万ドル(約3兆6000億円)であり、2020年に比べて9.2%アップした。LG(韓国)やレゴ(デンマーク)、アムコー・テクノロジー(米国)といった世界的に評価の高いグループが、ベトナムでの投資を増やしている。

フオン局長は、「2021年のFDIの増加は、ベトナムの投資・ビジネス環境に対する外国人投資家の信頼と期待の表れだ。また、ワクチン接種の加速も、今年のベトナム経済の成長を牽引すると予想される要素のひとつであり、2021年第4四半期には1億1,000万回の接種を行い、ベトナムはワクチン接種率で世界トップ10に入った。これにより、新型コロナの変異株から経済を守ることができるだろう」と分析する。

「こうした明るい兆しを踏まえれば、6~6.5%のGDP成長目標は達成できると考える」とフォン局長は続けた。

一方で、エコノミストらは、今年のベトナム経済にマイナスの影響を与える要因も指摘している。例えば、変異株の発生に伴い新型コロナの流行が続くことや、生産・貿易に影響を与える原材料価格の上昇が続くと予測されることだ。

成長の機会を最大限に生かすためには、ベトナムはパンデミックを抑制し、需給バランスを改善する必要がある。ワクチン接種は、18歳以上には3回目が、12~17歳には2回目の接種が行われている。政府は、経済成長の原動力として国内消費を刺激すると同時に、企業の生産と輸出の回復を支援している。こうした努力は、2022年にベトナム経済が躍進するための土台となるだろう。

また、FTAがもたらすチャンスも、GDP成長目標の達成に寄与すると考えられる。