「2022年、ベトナムの成長に期待」 ジェトロ中島所長インタビュー 

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のもとでも、ベトナムと日本の間の経済や投資関係は安定的に拡大してきた。日本ベトナムビジネス連合会(JVBA)副会頭も務める、日本貿易振興機構(ジェトロ)ハノイ事務所の中島丈雄所長はこのほど、ベトナム経済新聞(VEN)のインタビューに応じ、2022年の日越の経済協力について明るい展望を語った。

2021年のベトナムと日本の経済や投資関係について、どのように評価されますか?

我々の観測によると、2021年の経済指標や投資協力指標の多くは、新型コロナウイルスの世界的感染拡大前と比べ低下した。だが、全体的には、ベトナムと日本の経済投資関係は安定的に成長しているといえる。例えば、ベトナムから日本への昨年の輸出は、前年比4.8%増となった。新型コロナの影響で日本国内の需要が減ったり、一時的な減産や物流網の寸断などが生じたりしたために、成長率の伸びは大きくはないものの、この困難な時代においては前向きな成果だととらえている。

投資先を中国からシフトする大きな流れも後押しし、ベトナムは生産拠点の移転先になり得る場所として日本企業の関心を集めてもいる。2021年の1~11月、日本のベトナムへの資本投資総額は前年同期比54%増となった。内訳としては、新規投資が全体の73.4%、既存プロジェクトへの増資が20.4%だった。この時期に新たにベトナム国内での操業許可を得た日本企業は183社。中でも規模が大きかったのが、メコンデルタ地域カントー市近郊の「オモンⅡ火力発電所」への投資と、レンゴーが出資したビナクラフト製紙工場の新設(ビンフック省)のための6億1140万ドルの投資などだ。

ベトナムの2022年の経済回復と、経済貿易協力において、どのような機会と展望が考えられますか?

ベトナムは世界のサプライチェーン(供給網)の重要な部分を担っており、ベトナムでの製造停止が世界に影響を与えることになる。日本企業を含め、ベトナムで操業する海外企は、新型コロナに柔軟に対応し、徐々に海外との経済活動を再開してきたベトナム政府の決断を高く評価している。ベトナムの2021年の国内総生産(GDP)額は、2020年度の成長率2.9%にはおよばないものの、前年度比で推定1.5~3%の伸びを示している。2022年のベトナム経済のV字回復についても楽観的な予想が多く、その予測はジェトロの調査データとも合致する。

ジェトロのある報告書によれば、2021年はベトナムに進出していた日本企業にとっても厳しい1年だった。2020年と比べて自社利益が「改善した」という答えは調査対象企業の約31%に過ぎなかった。だが、2022年の展望について問われると、約56%が「2022年度じゅうに経済は改善し、回復する」と答えるなど、多くの日系企業がベトナムの将来に明るい見通しを持っていることがわかる。

日本の企業の多くは、自社が海外における生産拠点の設置先や輸出市場を広げる舞台として、ベトナムを見ている。そして、両国政府による貿易円滑化の取り組みのおかげで、両国貿易が今年確実に、画期的な転換を迎えることになると信じている。

2022 年の二国間の経済と投資の協力に向けて、ジェトロの活動の計画を教えてください

ジェトロ・ハノイ事務所では引き続き、見本市や展示会の開催、オンラインやオフラインでの事業展開を推進し、両国の企業のために取引の機会を創出していく考えだ。また、ベトナム政府とも連携し、ベトナムへの投資に関する会議や、地方都市などへの投資誘致セミナーの開催などを進める予定だ。投資会議や地方自治体との対話、視察を通じて、両国のビジネスを支援するとともに、特に日本企業がさまざまな投資の機会に遭遇し、ベトナム進出に向けた適切な準備を行うことができるよう、支援を強化していきたい。