ギソン石油製油所で苦境 ガソリン輸入を当面継続 ディエン商工相国会答弁

ロシアのウクライナ侵攻の影響で世界的に原油価格が高騰するなか、ベトナムでは、財政困難などからギソン石油精製所(北中部タインホア省)の稼働率が落ち込み、一部地域でガソリンなどが品薄になり、政府はガソリンや軽油の輸入に踏み切った。グエン・ホン・ディエン商工相が16日、国会で質問を受け、「今後も輸入を継続する」と語った。

第15回国会第9回執行委員会で、ガソリン問題などに関する国会議員らの質問を受け、答弁に立ったディエン商工相は、ベトナム国内に2カ所ある石油精製施設のうち、ギソン石油精製所が経営上の課題や財政難などから、原油の購入が難しい状況であると認めた。製油所を運営する「ギソン・リファイナリー・ペトロケミカル社(NSRP)」の報告によると、精製所は今年1月初旬以降、生産能力を80%にまで減少させ、さらにその後稼働率は55〜60%にまで落ちこんだという。国内の石油卸売業者への供給量もこれに応じて減少し、一部地域の市中で、ガソリン不足などが生じた。

これを踏まえて、国会議員からは、商工省のガソリンや石油供給の管理対応に関して厳しい声があがった。

ディエン商工相は、ベトナム周辺の石油精製所を持たない国々でもガソリン不足は生じていないと説明。「石油精製所があるわが国では、特定の税制を適応したり、価格安定化基金を適用したりしない限り、ガソリン・原油の価格を世界水準以下に引き下げることはできない」と、今年に入ってからの価格高騰について弁明した。今後も世界的なガソリン価格の上昇が続けば、商工相として関連税率を引き下げる考えを示唆。

「あらゆる手立てを尽くした後でも、ガソリン価格が高止まりするようであれば、貧困層支援のために福祉基金を活用するほか、大量にガソリンや石油製品を必要とする業種の支援などを検討していく」と話した。

◇備蓄量は十分
世界的な石油の価格急騰は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けたいくつかの石油生産国で、石油供給が寸断されたことが引き金となり、価格が戦争前に比べて40~60%上昇した。

加えて、ベトナム国内では、国内のガソリンの35%を供給するギソン石油精製所で稼働率が下がり、石油関連製品の供給が不足したため、国内市場で一時、ガソリンや軽油などの供給が不足した。ディエン商工相は、質問した議員たちに対し、「現状では、ガソリン備蓄が不足している状況にはない」と断言し、企業各社が海外からのガソリン輸入を倍増させるなどさまざまな対策がとられた結果、十分な国内供給量を確保できたとした。

一方で、ディエン商工相は、ギソン石油精製所の経営問題に関しては、25.1%の株式を所有し製油所の運営にかかわる主要株主の国営ベトナム石油ガスグループ(ペトロベトナム)と、主要出資者の出光興産、クウェート石油インターナショナルに対し、ベトナム国内市場向けの石油供給の約束を果たすよう促した。

ペトロベトナムと、国営企業の資金管理を担う「企業における国家資本管理委員会(スーパー委員会、CMSC)」の両者が、ギソン石油精製所が計画通りの石油製品供給を再開できると認めるまでは、「商工省は、原油の輸入を継続する」と明言した。

今年2月22日、商工省とペトロベトナムは、ギソン石油精製所のガソリンなどの供給能力についての検討を行い、今年第2四半期じゅうは供給を行わないとした。5月以降の生産については、詳細を発表していない。