GDP成長率、目標の6.5%から引き下げせず ベトナム統計総局

ベトナムの今年第1四半期の国内総生産(GDP)の成長率は、5.03%に達した。政府が年間目標としているGDP成長率6.5%の達成はこの先、さまざまな困難が予想されそうだ。しかし、ベトナム統計総局は当面、目標の下方修正はしないと宣言した。

◇確実な回復
政府は、社会経済開発計画と国家予算の実現のためのベトナム社会経済開発計画と、国家予算の実施のための主要な課題とその解決策についての政府決議01/NQ-CP号に基づいて行動すれば、ベトナムの経済は2022年、6-6.5%成長を実現することができそうだとベトナム統計総局では分析した。

分野別にみると、農業・林業・漁業分野の成長率は2.45%で、経済成長全体の5.76%を支えた。一方、製造・建設業は6.38%増加し、経済成長の51.08%を占めた。サービス業も回復を見せ、成長率は4.58%、経済成長の43.16%を占めた。

ベトナム統計総局のグエン・ティ・フオン局長は、GDP成長率5.03%という数字について、4.72%だった昨年第1四半期の成長率や、2020年の同3.66%の数字を超えるものであったことについては評価。しかし、2019年同期の6.85%の水準にまでは回復していないと指摘した。フオン局長は、「これらの数字の増加は、ベトナム経済が新型コロナウイルスの打撃から回復しつつあるということを示している」と分析した。

統計総局傘下の国民経済計算システム(SNA)のレ・チュン・ヒュー代表は、「今年の第1四半期は、多くの経済分野が国の経済発展に寄与した」と明らかにした。例えば、製造加工業分野が工業分野を背負い、7.79%の成長率を誇った。特に大きく成長したのは、携帯電話と部品類で19%の成長を見せたほか、グルタミン酸ナトリウムが15.7%増、自動車が13.4%、衣料品が12.4%、牛乳が9.2%となった。「ベトナム国内成長の基盤は農業が支えになったものの、サービス業も順調に回復を見せた」とヒュー代表は付け加えた。

◇将来性を示す期待のサイン
さらに、ヒュー代表は、工業分野の中でもとりわけ製造加工業が、さらには農業、卸売業、小売業、エンターテインメント業なども、今後のベトナムの経済発展の原動力になるだろうと予測した。

一方で、ロシアによるウクライナ侵攻をはじめとするさまざまな障壁によって、政府が掲げた6.5%のGDP成長率達成は、厳しい挑戦になると見ている。ベトナムは、輸出に頼るその経済構造から、世界経済のリスク要因に対してはきわめて脆弱なのだ。

さまざまな困難は予想されるものの、統計総局では、「将来の発展の可能性は大きい」として、2022年のGDP成長率の目標を据え置くこととした。特に農林水産業の安定を指摘し、多くの製品が、需要の拡大のおかげで高価格帯を維持しているとした。工業生産も順調に回復し、輸出も大きく成長した。さらに、付加価値税(VAT)や金利の引き下げといった、政府の社会経済発展と回復のためのさまざまなプログラムが、さまざまな支援策によって裏打ちされ、製造業の回復と市場への投資誘引に貢献しているという。

6.5%のGDP成長率達成には、新型コロナをめぐる効果的で安全な適応に関する128号政令を引き続き行うことが重要であるとともに、公共投資の実施や輸出の加速や継続的なマクロ経済の安定を目指すことも求められる。生活必需品の価格変動を観察し、インフレになるシナリオを検討しながら、国内生産を促進し、自給自足を増大させ、国内消費促進のためのさまざまな障壁撤廃を図る必要がありそうだ。