ベトナムのインフレ圧力を高める3つの要因

ベトナム国会は、2022年のGDP成長率目標を6~6.5%に、消費者物価指数の平均上昇率を4%に定めている。しかしながら、今年第1四半期は、ガソリンや石油の仕入れ価格が急激に上昇し、その他の要因とともに大きなインフレ圧力となっている。

写真㊤=生活必需品の価格動向を注視

財務省は昨年末以降、物価に影響を与えるリスクや要因の中に、不確定な外的要因が含まれるとしている。特に、ロシアによるウクライナ侵攻により、原材料やエネルギー価格が大きく上昇し、欧州諸国の平均インフレ率は現在5%を超えている。同省物価管理局のグエン・スアン・ディン氏は、「大部分が開放経済であるベトナムとしては、海外から商品を買う際に、このインフレの一部を『輸入』することになり、生産や事業コスト、商品価格に影響を与える可能性は高い」と警告する。

さらに、ディン氏によると、ベトナムは政令に基づき、公共サービス価格を調整するロードマップの実施を迫られている。しかしながら、この調整には、財務省や統計総局、関係当局による慎重な評価と推計が必要であり、「財務省は、今年のインフレ率が3.6~4.3%になった場合の物価管理シナリオの計画について、各部門と調整している」と述べた。

◇燃料価格の高騰
国家金融監督委員会の傘下にある国家金融監督情報センターのグエン・バ・カン氏は、「2月末以来、世界の原油価格は急騰している。わずか2週間の間に、米国エネルギー情報局は、原油の平均取引価格の継続的な調整を迫られ、2021年の価格と比較して50%以上上昇し、その結果、鉄鋼や肥料、石炭といった基本的な商品価格の上昇を招いて、大きなインフレ圧力となっている」と解説する。

同センターの試算によると、2022年第1四半期のベトナムの平均インフレ率は、2021年と比べて2~2.2%上昇する可能性がある。基本物資の価格上昇とともに、金融経済回復策が総需要を促し、インフレをさらに助長することが確実視されている。

統計総局の元局長であるグエン・ビック・ラム氏は、「ベトナムは3つの要因によって、インフレ圧力に直面している」と指摘する。

「第1に、2022年初頭に始まる国内総需要の劇的な上昇だ。特に今後2年間は、350兆ドン(約1兆9000億円)規模の新型コロナ支援策が国内総需要を押し上げるため、確実にインフレとなる。第2に、ベトナム経済は輸入燃料に依存しているため、世界的な燃料価格の急騰もベトナムのインフレに拍車をかける。第3に、インフレの最大の要因は、例えば、欧州のガスサプライチェーンの崩壊といったように、サプライチェーンが混乱することだ」

ラム氏は、「当面のインフラを抑制するためには、国の関係機関が、市場の需要に見合った形で、商品供給をコントロールする必要がある。特に、ガソリンや石油、ガスの供給を十分に確保するとともに、ベトナム国内の地域間や、世界とベトナムの間のサプライチェーンの混乱を避けるために、可能な限りのことを行うべきだ」と述べた。

財務省は、物価の安定やインフレ抑制のための施策を適時実施するために、生活必需品、原材料や燃料、特にガソリンや石油の価格を含む、世界経済の動向を注意深く監視する必要がある。