ブロックチェーン普及を支援 経済回復の原動力に

暗号技術によってデジタル情報を分散管理するブロックチェーン技術が、世界的なトレンドとなりつつある。ベトナムも例外ではない。金融や製造業、物流、エネルギー、教育…。ありとあらゆる業界で効率化やコストダウン、起業が期待されている。科学技術省は今年、 ブロックチェーン導入支援に向けた事業を整理して、優先順位をつける方針だ。

写真㊤=ブロックチェーン技術は金融から製造業、物流まで、幅広い分野で導入されている

ブロックチェーン技術は財務管理、不動産、小売、物流などでも広く導入されている。ベトナム国内では、ゲームやデジタル資産の分野で導入が進む。銀行業界では暗号資産の普及などにともないMB銀行やベトコン銀行(Vietcombank)が導入を発表。 年内には保険業界でも試験的に導入。農業分野でも試験が行われている。

ブロックチェーンを使った DeFi(分散型金融)のソリューションを手がけるデコム・ホールディングス( Decom Holdings)のファン・ズック・チュン社長は、「ブロックチェーンの発展によって、スマートコントラクト(ブロックチェーン上での契約)や暗号資産の一種である非代替性トークンなど、さまざまな技術が実現した」と強調。プレイすることでトークンなどの収益が得られるゲームファイ(Gamefi)という新たな分野においても、アクシー(Axie)や、スカイマビス(Sky Mavis)といった世界的なスタートアップ起業が生まれていることも例に挙げた。ブロックチェーン研究所所長で、郵便電信協会会長のダン・ミン・チュアン博士は「この技術には、まだまだ創造と起業の予知が残されており、将来的にはさらに普及するだろう」と予想する。

新技術は、経済の回復や新たな成長の原動力になると期待されている。科学技術省南部地域事務所のグエン・マン・クオン副所長によると、同省ではブロックチェーン導入の支援事業を展開する予定で、社会的利益などの見地から優先度を決める。ただし、「一つのエリアだけにフォーカスし過ぎてはいけない。農業や物流のトレーサビリティーなど、他の有望な技術導入も怠ってはならない。企業は、高いコストを伴う投資に見合う効果を得られるのか慎重に見極めなければならない」とクオン副所長は注意を促した。

一部には慎重な意見もあるが、ブロックチェーンによる業務効率化やコスト削減はすでに世界中で証明されている。ホーチミン市コンピューター協会のブ・アン・チュアン事務局長は、「人材開発の課題とは常に、挑戦と法的障壁だ。ブロックチェーン技術の人材開発においても、それらが足かせとなっている」と指摘している。