ベトナムの輸出企業、原材料不足、価格高騰に苦慮

電子機器や木材、繊維、履物などの輸出企業は、継続的に供給が途絶えることによる生産資材不足を懸念している。

◇原材料不足
2022年上半期、商品の輸出額は1859億4000万ドル(約25兆4600億円)に達し、前年同期比で17.3%増となった。一方で、多くの企業は年末までは受注があるものの、原材料が不足しているため生産を加速できないでいる。

データロジック・ベトナム社のダン・バン・チュン取締役は、「市場需要は大きいが、企業は電子部品が不足しているため新しい注文を受けることができない。代わりの原材料を見つけるのに時間を要しており、工場の売上は計画より15%減少している」と指摘。そして、「電子部品の不足は、エレクトロニクス業界全体の問題。当社も顧客ニーズに合った代替材料を探している」と続けた。

ドンナイ木材・手工業協会のボー・クアン・ハ副会長は、「欧州からベトナムへの木材供給は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で急激に落ち込んでいる。ベトナムの木材会社は、供給を受けるために高騰した価格で購入しなければならない」とした上で、「今年3月のパイン材の輸入価格は、1立方メートル当たり300ドル(約4万1000円)を超え、2021年に比べて約100ドル(約1万4000円)上昇した。ニュージーランドなど主要市場からの木材原料の供給は80%減少。アルゼンチンからは53%、オーストラリアからは72%、欧州からは90%以上減少している」と言う。

原材料不足により生産コストが上昇し、需給の混乱も招いた。2022年、水産業界は原材料の不足や原材料・飼料の高騰により、生産規模を縮小せざるを得ず、輸出目標である100億ドル(約1兆4000億円)は達成できそうにない。

ゴー・ダン社の事業マネージャー、グエン・アイン・ニャン氏は、「当社は生産を確保できるだけの十分な原材料を有しているが、原材料や動物飼料の高騰により製品価格が上昇し、競争力に影響を及ぼしている」と語った。

◇緊急対策
原材料不足への対策は、多くのベトナム企業にとって非常に重要な課題だ。企業の多くは、取引先と交渉して利益を減らしながら、柔軟な納期で合意をする一方、原材料の新しいサプライチェーンを確立し、コスト削減や競争力向上のための科学技術の導入を進めている。

具体的には、ドンナイ省の木材会社は、欧州に代わって米国からの原材料の輸入を増やす方向に転換した。また同社は、メラレウカやゴムといったベトナム産木材へ切り替えるよう、取引先と再交渉している。

しかしながら、納期を遅らせたり、パートナーと原材料を共有したり、コストを削減したりといった対応は、短期的な対策でしかない。専門家は、企業が国内の原材料を生かして長期的な生産を確保できるように、国はマクロ政策を策定する必要があると指摘する。

また、ビンディン・フィッシャリー社のカオ・ティ・キム・ラン取締役は、「水産加工の原材料供給を確保するために、政府は燃料価格や漁業者への支払いの安定化に関与する必要がある」と述べる。

商工省は、海外の貿易事務所に対し、繊維や履物、コンピューター産業向けの原材料に関わる流通業者、メーカー、輸出業者の最新のリストを調べ、提供するよう指示した。一方で、同省は、輸入依存を減らすために、裾野産業や一部の重要な素材産業を対象にした長期的な解決策を模索している。