外資、小売業への投資拡大=1億人の市場、中間層が急成長

多くの外資系小売グループが、ベトナムでのスーパーマーケットやコンビニエンスストア事業への投資拡大を発表している。

◇THACOもチェーン展開
新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きを見せる今、国内外の小売業は、持続可能な発展やベトナムの生産者や企業、消費者により良いサービスを提供するため、流通システムの拡大やブランドアイデンティティの再構築を行っている。

写真㊤=活況を呈するベトナムの小売市場

2022年初頭、イオンベトナムは、都市部で中小規模のスーパー「イオンマックスバリュー」をスタートさせ、同年上半期に平均で5~10%の成長率を記録した。同社の古澤康之社長は、「ベトナム市場には、日本の有名な小売ブランドのほとんどが進出しているが、これは約1億人の市場があり、高品質の製品を好む中間層が急成長しているためだ」と話す。

日本貿易振興機構の最近のレポートによると、日本企業の約55%がベトナムでのビジネス拡大を希望しており、そのうち約6割が小売・サービス業に関心を持っている。

また、セントラルリテール・ベトナムのオリビエ・ラングレCEOは、「今後5年間で、ベトナムの小売市場に20兆ドン(約1200億円)を追加投資する」と述べている。過去10年間のグループの年間売上高は25兆ドン(約1500億円)を超え、セントラルリテール全体の売上高の22%を占めている。

ベトナムチュオンハイ自動車(THACO)グループは、韓国の大型スーパーのイーマートを買収し、チェーン展開に乗り出した。THACO傘下のTHISOリテールのチョン・ビョン・キ社長によると、年内にホーチミン市のトゥドゥック市とゴーヴァップ区にイーマートを2店舗オープンする。今後5年間でさらに20店舗オープンし、2026年までに10億ドル(約1400億円)の売上を目指す。

◇事業戦略の転換
2022年、投資の流れは徐々に小売業へシフトしている。

マーケティング企業のカンター・グループ傘下、カンターワールドパネル・ベトナムのコマーシャルディレクター、ピーター・クリストウ氏は、「消費者が次第に伝統的な市場から小規模スーパーやコンビニを選ぶようになり、生鮮食品を含む消費者のほとんどのニーズを満たしている」と指摘。しかし一方で、「消費者の買い物体験をより便利にするには、売り場の改善も必要だ」と続ける。

また、Eコマースでの商品購入が広がる中で、小売企業は将来の基盤安定化のために、オムニチャネル販売戦略に注目している。オムニチャネル販売は、ビジネスのプレゼンスを確保し、顧客に中断のない買い物体験を提供するのに適している。セントラルリテール・ベトナムのラングレCEOは「長期的には、ベトナムの小売市場は他の要因にも左右されるが、約1億人の人口を抱えるベトナムは、過去10年間で強力な中間層が成長した国の1つであり、多くの海外投資家にとって魅力的な投資先となりつつある」と強調した。

不動産サービス会社のCBREアジア小売部門のヴィヴェック・カウル代表は、「ベトナムは依然として、小売業者が事業拡大のために調査を希望する市場のトップである」と語った。