ベトナム米は、品質の向上とブランド認知度の高まりにより、要求の厳しい海外市場への進出に成功している。

写真㊤=フランスで販売されるベトナム米

◇市場拡大
ST25米を日本市場に持ち込むには、600を超える厳しい技術基準と高い要求事項を満たさなければならない。在日ベトナム貿易事務所によると、これらの条件を満たした「メイド・イン・ベトナム」のST25米が9月1日、内閣府の特別昼食会で初めて提供された。

この成功を受けて、ロックチョイグループの「コムベトナム米」が、TTフーズを通じて、フランスの大手小売チェーンのE・ルクレールへ輸出された。過去には、500トンの同ブランド米が、フランスのカルフールチェーンで販売されたことがある。欧州のパートナーは、2022年、23年にも追加注文すると予測されている。

カントー市にあるチュンアンハイテク農業のファム・タイ・ビン社長は、「過去9カ月間で、自社による輸出も含めて米輸出全般は好調で、当社では欧州市場の需要に見合うだけの在庫がない状況だ。今年の最後の4カ月間の需要を満たすために生産を拡大しようとしている」と語る。

ベトナム統計総局(GSO)のデータによると、2022年1~9月で、ベトナム企業は推定544万3000トンの米を輸出し(前年同期比19.3%増)、26億4000万ドル(約3844億円)を売り上げ、前年同期より9.3%増加した。

メコンデルタ米研究所の前副所長であるズオン・バン・チン准教授は、「多くの企業がベトナム米をハイエンド市場に提供できていることは、この市場でベトナム米の価格がタイ米より高いという事実に反映されており、前向きな展開だ」と話す。

◇バリューチェーンの拡大
Vライスのマーケティングディレクター、ファム・バン・コー氏は、「国産米の価格は2つの要因で決まる」と指摘する。それは、米ドルとベトナムドンの為替レートの上昇と、フィリピンやマレーシアでの米製品の需要拡大だ。秋冬米の価格は上昇しており、生産者に次の冬春米への投資を促すだろうと予測されている。

ベトナムのエコノミストや企業は、気候変動の影響を受けながらも、今後3年間はこれらの好条件による恩恵を受けるとみている。

ロックチョイグループのフイン・バン・トーン会長は、「ベトナムは、インド、タイに続く世界第3位の米の輸出国だ。年間の米輸出量は、約600万~650万トンであり、世界の7.8%、中国市場の24.5%を占める。現在、ベトナム米は主にアジア・欧州の28の国と地域に輸出されている」と話す。

さらに、フイン会長は「ベトナム米は徐々に要求の高い市場に浸透している」としたが、一方で、これらの市場が残留農薬を検査し、国境で定期的にベトナム米をサンプリングし、市場の他の製品とクロスチェックを行うことに警戒感を示した。

要求の高い市場でベトナム米が浸透していることは、その品質が国際市場でシェアを獲得するのに十分であることを示している。