伸び悩む国内自動車製造 高い価格と、低い生産性

ベトナムの国民にとって、自動車はまだまだ〝高嶺の花〟だ。ASEAN(東南アジア諸国連合)内で比較しても、タイやインドネシアのほぼ2倍となっている。この理由について商工省は、税制度と手数料、生産性の低さなどが原因として、優遇措置や業界の支援策などを提案している。

写真=ベトナムの自動車価格はタイやインドネシアに比べて約2倍。庶民には手が届かない存在だ

ベトナムでは昨年末現在で、40以上の自動車の製造、組立会社が操業。世界的な自動車大手の多くがベトナムに製造、組立工場を持っており、うち35%が外資系だ。これらの工場は、9席未満の車では国内需要の70%を生産し、トラックやバスはタイやフィリピンに輸出している。同省によると、国内の自動車製造、組み立てのキャパシティーは年間32万3892台に上る。

人口約1億人のベトナムは、ASEANの自動車市場として大きな潜在力を秘めている。しかし、国内自動車産業は溶接や塗装、組立、試験の業務に集中。自動車価格も、タイやインドネシアのほぼ2倍、米国や日本との比較においてはさらに高い状況が続いている。

同省が財務省宛てにまとめた報告書では、自動車の高値の原因として、高い税金と手数料、少ない生産量を挙げている。さらに、もう一つの理由として完成車輸入品に適用される優遇税制を挙げる。現行法では、自動車に適用される関税は価格の50~ 70%だが、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)の加盟国から輸入される現地化率40%以上の完成車は、2027年まで関税が免除される。この適用を受ける輸入車の75%をタイとインドネシア2国が占めている。

さらに両国は大規模な投資を誘致しており、ベトナムの自動車業界にさらにプレッシャーをかける。同省産業庁によると、ベトナムの自動車市場の規模はタイの 3 分の 1、インドネシアの 4 分の 1にとどまる 。製造コストの面でも、部品やスペアパーツのほとんどを輸入する必要があるため、他国と比べて10~20%高くなる。

同省では、国内自動車産業の発展と現地化率のアップ、自動車価格の低下を図るには、市場規模の拡大と製造費用のコストダウンという2つの課題を克服しなくてはならない、としている。

市場規模の拡大には、国民の懐事情もからむ。一般的なベトナム人の所得は、自動車を持つにはまだ十分とは言えない。 1 人当たりの国内総生産(GDP)が年間 4000㌦(約54万円)以上になれば、自動車産業が急速な成長を遂げる、という試算もある。

同省は、国内には自動車産業発展に向けた適切な政策や、海外からの投資を誘致する仕組みが不十分なうえ、企業の製造能力も低く、輸送インフラも不十分であると指摘。製造、組立事業に対する追加の支援や、部品輸入に関する税の優遇措置などが必要として、財務省にも提案している。