ベトナムの農業、水産、食品への投資増加

従来、工業生産分野が多かった日系企業のベトナムへの投資だが、近年、農業や食品分野への関心が高まるなど、投資傾向に変化がみられる。

日本貿易振興機構(JETRO) ホーチミン事務所の安栖宏隆(やすずみ・ひろたか)所長によると、日系企業の投資は、1990年から2000年ごろまでは工業・製造業が中心だった。それが2012年以降、小売業、サービス業、農業や食品分野に投資するケースが増えているという。
現在、ホーチミン市には、日系企業が投資した食品販売店が約300店ある。その80%は現地のベトナム人顧客向けに展開している。ベトナムに牛乳やチーズ、飲料や菓子類、さらには牛肉、イカ、タコなどの食品を輸出するために、ベトナムのパートナーを探している日系企業も多い。
一例として、毎日新聞社は2014年、中小企業のベトナムでの販路開拓を支援しようと、ホーチミン市1区にアンテナショップ「Plus Mainichi」を開設した。農業に関しては、最近、多くの日系企業がビンフック省を訪れ、同省の食品安全や野菜生産などを調査した。また、ビンディン省では、マグロの漁獲や加工、メコン・デルタの多くの地域では、農水産物(果物、エビ、魚など)が日本人の関心を集めている。
安栖所長によると、日系企業のベトナム進出は日本政府からも後押しを受けており、今後もベトナムで農業や食品分野への投資は一段と増える見込みだ。多くの日本企業はベトナムの農業分野に関心を抱いており、ベトナムの農産物に付加価値を与えるために、自分たちのもっている農業発展の経験やノウハウを、喜んでベトナムと分かち合うだろうともいう。
さらに、ベトナム政府の支援があれば、コーヒーやお茶、エビ、野菜などの食品原材料の加工プラント建設などにおいて、多くの日本企業は中長期的に協力してくれるだろう。
 ベトナムの農林業や漁業生産物の輸出額は現在まだ高くないが、加工の精度や速さを追求し、高めることができなければ、困難な海外市場に到達するのは難しく、輸出額は低迷を続けるだろうと、安栖所長は強調した。
現在、農業農村開発省の農林漁業局では、農産物や魚介類の加工業の発展を計画しており、日本との協力の枠組みのなかで、ベトナムが安心安全で高品質の農産物・魚介類などの供給国となれるだろう。