ベトナム南中部の海岸沿いに位置するフーイエン省。世界的にも名高い美しい湾や、断崖絶壁のGành Đá Dĩa(ガン・ダ・ヂァ)などの景観を誇り、かつての「海上のホーチミン・ルート」のなごりを残すなど、観光名所も多い。フーイエン省文化・スポーツ・観光局のティン局長は、「フーイエン省はきれいでしょう?この省の湾は『世界の最も美しい湾』の候補にも挙がっているんですよ」と強調する。

独特の絶景
同省の海岸線でも、特に美しいといわれるのが、スァンダイ湾とブンロー湾だ。

スァンダイ湾は、トゥ・ホァ市から北に約45キロメートルのところにあり、青い水が絵のような美しさだ。この湾は15キロメートルにもわたって山々が連なり、ユニコーンの頭のような形をつくる。湾には島や半島なども多く、海岸線の複雑な景観と手つかずの自然が美しい。もう一つの特徴は、粒子が細かく、美しい砂の浜辺だ。景観の美しさだけでなく、おいしいイセエビや魚なども採れることで有名だ。

ブンロー湾には1.64ヘクタールものビーチが広がる。水がきれいで、景観が美しく、観光したり泳いだりするのに魅力的な場所だ。湾には、色とりどりの珊瑚もあり、魚釣りやシュノーケリングなども満喫できる。

この湾は「海上のホーチミン・ルート」としても知られる。1964~1965年ごろ、南中部一帯や中部高原などの戦場に届けるための武器や支給物資が、北部からここまで船で運ばれ、陸揚げされていたからで、湾は戦争の歴史を伝える遺跡の一面ももつ。

 

観光への投資を誘致
同省の自然や景観は手つかずで美しく、多くの観光客を魅了する可能性を秘めている。一方で、観光客を受け入れるためのインフラはまだ非常に乏しい。そのため、2013年の観光客は60万人ほどしかおらず、このうち海外からの観光客は6万人にすぎない。

同省のニャット人民委員会主席は、「中部高原や南中部の海岸方面への旅とからませて、同省への旅行を発展させ、2020年までに観光業を同省の目玉産業にしたい。2015年の観光客の目標数は90万人で、うち10万人の外国人観光客の誘致を目指す」と話す。

目的達成のために、省では観光PRを発信するとともに、インフラ向上のための投資を積極的に進めている。まずは省内の交通網整備が必要と考え、主要な高速道路を整備しているのだ。トゥイホア空港は、総事業費3530億ドンをかけて新ターミナルなどを整備し、2013年に運用を開始したばかり。エアバスの320や321、ボーイング777などの大型旅客機も受け入れが可能で、年間55万人を迎えることができる体制だ。

15兆6030億ドンが投資されたカー峠のトンネルも、2017年に完成の予定だ。また、フーイエン省を走る国道1号線も4兆3500億ドンをかけて改良工事が進められており、来年9月には終了する。おかげで、急で危険だった山道の走行を避けることができるようになり、フーイエン省内の地域・都市間の移動が劇的に短縮され、便利になる。

同省では、観光業への投資を最優先しており、行政手続のうえでもさまざまな特例措置を認めることで、投資を誘う。フーイエン省は大きなポテンシャルを秘めており、さまざまな喚起によって、省内の観光が“目覚める”日が待ち望まれる。