ベトナムの米蔵・メコンデルタ地方は、全国でも有数の水産物・果物・野菜の産地でありながら、海外直接投資(FDI)は少ない。1993年-2014年のこの地域への政府開発援助(ODA)は5兆7億ドルだったが、農業分野への投資は5億ドルだったという。

成長の遅れ挽回
1993年-2014年にメコンデルタが得たODA5兆7億ドルは、全国のODA の8.2%に当たる。農業投資5億ドルをのぞけば、ほとんどが加工業、製造業、不動産関連だった。

計画投資省によると、2014年9月までのメコンデルタ地方での有効なFDI案件は、903件。登録資金は118億ドル、全案件の5.3%、全国の投資金額の4.9%を占めている。その中で、農林業・水産業関の投資は52件で、登録資金は2億4250万ドル。現在、同地方の経済成長率は高くなく、各分野で減速ぎみだ。2014年上半期の成長率は、2013年同期比8%増にとどまっている。

遅い経済成長の原因は、多くの農産品の消費がまだ安定的ではないことだ。農業の発展計画や市場調査の面も弱く、農業規模も小さい。さらに、物流に勢いがなく、人材面でもまだ不足があることなどから、投資を得るのが難しい。海外からの投資誘致ともなればなおさらだ。

経済成長の遅れを挽回し、投資を増やするためには、メコンデルタ一帯でインフラや物流網を構築することが急務だ。人材育成、品質の安定した農産物の加工工場の設置や、計画的な原料の供給なども実現する必要がある。また、企業や共同組合などへの資本支援などの対策も必要だ。

メコンデルタはその豊かな土壌と生産性を生かし、2015年までに経済、社会を発展させるねらいで、全国でも特に有力な農産地域になるよう努力している。そして、持続可能な海洋漁業などの経済成長も目指しての行動も始まっている。

農業投資誘致の課題
最近、日本や韓国の多くの企業団が一帯を視察して、農業関連の協力機会を探る機会が相次いだ。今年10月には、ある日系企業がドン・タップ省を視察し、メコンデルタを次の投資先に決定する、というケースがあった。

ドン・タップ省はベトナム全国でも第3位の米の生産量を誇っており、10000ヘクタール規模の大型水田を作る計画を立てている。各専門家は、これからメコンデルタに関心を抱く日本や韓国、台湾の企業が急増すると見ている。

農業は海外からの投資金が少ない分野だ。しかし、各専門家によると、この分野は、これまでの困難な状況での「経済の緊急事態を救う命綱」でだけあるではなく、さらに発展できる可能性を秘めている。しかし、多くの困難を解決して、需要と供給を安定させることや、科学技術進歩を適用していくなど、多くの対策が必要だ。

最近、大手銀行や不動産業界が農業案件に数十億ドルを投入したのは、投資の明るいきざしだ。現在、メコンデルタでは投資誘致の案件を約100件抱えている。海外からの投資を呼び込むために、地域ごとに活発に問題解決を図り、投資環境を改善して外国投資家に協力していくほか、なによりもベトナム側が主体的な農業発展の青絵図を描く必要がある。