ビンフック省、FDI誘致成功の秘訣とは

ベトナム北西部のビンフック省は、2017年末までに、イタリア、日本、韓国、タイなど世界有数の企業グループを含む、310のFDI(海外直接投資)プロジェクトを誘致し、登記資本金の総額は40億ドルを超えた。

■ホンダ、トヨタなどを誘致
ベトナムエコノミックニュース(Vietnam Economic News)の取材に対し、同省人民委員会の副委員長、レ・ズイ・タイン氏は、「過去20年間において、FDIセクターは、ビンフック省の経済成長に大きく貢献している。海外貿易を増大させ、雇用を生み、経済改革や国際的な経済統合を促進する機会を生み出した」と述べた。さらに、「ビンフック省とフート省は、1997年にビンフー省から分かれてできたが、当時、ビンフック省には1つの工業地域と91の企業しかなく、省の経済は農業が中心だった。歳入も1000億ベトナムドンと低く、国家予算からの割り当てに依存していた」と振り返る。

しかし、的確なFDI誘致政策が、こうした構図を変えた。

ホンダ、トヨタ、住友(日本)、Piaggio(イタリア)、Sindoh(韓国)、Prime Group(タイ)といった世界有数の企業の誘致に成功し、省の社会経済面での発展を後押しした。

タイン氏によると、FDIセクターは現在、ビンフック省の全開発投資の20%近くを占め、貿易額の約95%を生み出している。また、約75,000人の雇用を創出し、うち73%が省内の住民で、残り27%は近隣の省からの労働者だという。

工業、建設部門の省内GDPに占める割合は、1997年は18.4%だったのに対し、2016年は61.9%と大幅に増加。1人当たりの収入は、1997年は140ドルで国平均の48%でしかなかったのが、2016年には3000ドル近くに達し、国の平均より高い値となった。ビンフック省は現在、歳入面では、北部地域で2位、全国では6位に位置している。

「FDIセクターによって、現地企業は、高度な市場戦略や先進技術、管理技術を知るようになった」とタイン氏は言う。こうしたセクターは、省の対外関係も広げ、韓国の忠清北道や日本の秋田県との間で、追加的な投資を得る協力協定の締結にも役立った。

■投資家を尊重するビンフック省

ベトナム商工会議所(VCCI)所長のヴー・ティエン・ロック氏は、「ビンフック省の成功は、空港や港湾施設がないことや、地域性や人口の面で利点がないことを踏まえると、より強い印象を与える」と述べた。また、駐ベトナム日本国特命全権大使(当時)の深田博史氏は、同省の投資環境を称賛し、FDIの誘致政策が最も優れている地域に位置付けた。そして「ビンフック省の日本人投資家は、投資環境についての苦情はない」とも述べている。

ビンフック省人民委員会委員長のグアン・ヴァン・チー氏によると、外国人投資家にとっての大きな魅力は、事業運営を促進させる投資環境にある。彼は「ビンフック省は、外国人投資家を市民と考え、彼らの成功は自分たちの成功だと捉えている」と話した。

2016年、ビンフック省は、2つの決議案を採択した。これらは、地方の投資環境の改善、2016年から5年間における省の競争力の強化、そして、経済改革で困難に直面している地域への投資を促すことを盛り込んでいる。これらの決議は、事業環境の改善と事業運営を促進する行政改革に向けて、努力を行う重要性を強調している。

ビンフック省では、工業地域への企業誘致に注力するとともに、自動車の製造・組立、自動車、バイクの部品製造に関するプロジェクトの支援を優先する計画だ。また、同省は、そのほかの多国籍企業や日本、韓国、台湾の中小企業、そしてEUや米国の投資家からもFDIを呼び込もうと努めている。

ビンフック省人民委員会の副委員長、レ・ズイ・タイン氏 FDIセクターは、省予算の主要な収入源であり、省の国内収入の84%以上を占めている。