農家によるマングローブ林の保護が好調 森の浸食防ぎ、世帯収入も向上 キエンザン省

メコンデルタのキエンザン省では、行政当局が、沿岸地域の森林保護のため、農家に土地を割り当てて植林や森林の手入れなどを委嘱する環境保護プログラムを展開し、成果が見え始めている=写真。プログラムに参加する農家は、土地の一部を養殖に活用できるため、世帯収入の増加にもつながっているという。

同省のアンビエン郡とアンミン郡では、沿岸部に、海水と淡水が混ざり合う汽水域の湿地が広がる。ここには、全長約60キロメートルにわたり、マングローブを中心とした原生林が生い茂り、その面積は約4000ヘクタールに及ぶ。

このうち、アンビエン郡タイイエン村とアンミン郡バン・カイン・タイ村にまたがる汽水域には、見渡す限り広がる原生林森林帯の脇に、苗木のような林が帯のように並んで存在している。この一帯が、森林の浸食を食い止めるため、2011年から、同省当局が樹木の植林と保護を地元農家に委託しているプロジェクトの対象地。現地で「ドゥオック(Đước)」とよばれるマングローブの一種が植林され、大切に育てられている。

プロジェクトでは、農家らは委託を受けた土地の7割にマングローブを植林し保護することが義務付けられるが、残る3割の土地を、魚やエビ、カニ、貝類などの養殖に活用できる。当局によると、この魚介類の養殖事業が、農家が貧困を脱する大きな手助けになっているという。

アンミン郡のトゥアンホア村で15ヘクタールのマングローブ林を保護するヴァン・キンさんは、マングローブを植林、保護するかたわら、2枚貝の一種であるザルガイとエビ、カニを養殖している。世帯年収は1億5000万~2億ドン(6600~8800ドル)。その多くがザルガイによるものだという。「あと数年もすれば、マングローブが育ち、さらに収入が増えるだろう」とキンさんは期待を膨らませる。

同プロジェクト管理委員会のチャン・フィー・ハイ委員長は、森林保存の委託事業が始まってから、浸食や過度な伐採が危惧されていたマングローブ林は、大きく回復したという。

グエン・バン・ホエさんは、アンミン郡ナムタイア村でこの事業に参加。彼の委託された土地のマングローブ林は植林から7年目を迎え、「私の森は、原生林と見分けがつかないほどに育っている。本当に美しく、よく守られている」と胸を張る。

この地域はザルガイの産地として知られており、他の地域よりも味がよいとされる。「そのため、ザルガイの養殖は、エビやカニの養殖よりも利益がいい」と話すホエさん。ザルガイからの収入は4億~5億ドン(1万7600~2万2000ドル)に達する。汽水域の森林の保護と植林事業によって、「環境が守られるのはよいことだし、この地域の暮らしもずいぶん改善された」と話した。