ハロン湾の玄関口、ドンバン国際空港 開港で観光客誘致に期待

ベトナム北東部クアンニン省の省都で、世界遺産のハロン湾観光の拠点であるハロン市郊外に昨年12月末、ドンバン(Don Van)国際空港が開港した。観光発展の突破口として、ベトナム政府が打ち出した「航空自由化」の一環。ハロン湾へのアクセスが格段に向上するとあって、観光客誘致に弾みがつくと観光業界の期待が高まっている。

同空港はハロン市中心部から50キロ弱。これまでは、首都ハノイからバスで何時間もかかっていたハロン湾観光のための移動時間が大幅に短縮できる。同空港のへは、ベトナム航空がタンソンニャット国際空港(ホーチミン市)を結ぶ新路線を就航したほか、ベトジェット・エア、バンブー航空が乗り入れ、毎週30便以上が運航されている。平均座席利用率は約70%で、空港利用者はすでに1万5000人を越えた。

バンドン国際空港は、民間企業が施設を建設後、一定期間、運営などを行ってから、資産の所有権を公共に移転するBOT(建設・運営・移転)方式で開発されたベトナム初の空港だ。滑走路は1本で、ターミナル施設の旅客受け入れ能力は250万人という。

2月下旬から3月上旬にかけて、空港会社は国内外でPRイベントを展開し、世界の60社以上の航空会社や旅行会社が参加した。空港と航空会社、旅行会社との間での協力協定も結ばれ、署名企業にはカンボジアのスカイ・アンコール航空をはじめとする東アジア各国の航空会社のベトナム支社、ベトトラベル、スマイル・ベト、韓国のハナ・ツアーなどの旅行会社が名を連ねている。

ベトナム民間航空局(CAAV)はこのほど、ベトナムのナショナルキャリアであるベトナム航空とカンボジア観光局との間で、観光開発に関する協定(2019~2021年)も締結されたと発表した。今後ベトナム航空は、同空港とカンボジアの首都プノンペン、アンコールワットなどがあるシェムリアップ、南部のリゾート地、シハヌークビルなどを結ぶ路線の就航を目指す。2月末のグエン・フー・チョン書記長兼国家主席のカンボジア公式訪問中に、調印式が執り行われた。CAAVのボー・フイ・クオン副局長によると、この協定が、ベトナム政府が航空自由化のために打ち出した「海外市場と観光都市を結ぶ空路開拓に関する首相政令105/QD-TTg号」の適用第1号になるという。

クオン副局長は、「今後、バンドン国際空港からは、国内路線では北部ゲアン省のビン市や中部のダナン市、東シナ海に面したリゾートのフーコック島などへの航空便運航を計画している。また、国際路線では、2025年までに、中国、韓国、日本、タイ、マレーシア、シンガポールなどとの間で、順次路線を開拓していく。これらは、空港の発展とクアンニンの継続的な観光活性化の決定的な要素となるだろう」と期待を示した。

バンドン国際空港とクアンニン省は、新航路の開拓やハロン市を経由するベトナムツアーの新商品企画を促すため、さまざまな策を講じている。空港ターミナル内に企業の専用カウンターを設置する費用や、空港内での広告設置などの料金割引などが一例だ。同空港のファム・ゴック・サウ社長は、「主にチャーター便を対象に、離着陸料や空港の地上支援業務費用も70%の引きを適用している」と話す。

ドンバン国際空港が、特に注目するのが、目的地へ向かう途中の乗継ぎ地として、24時間以上滞在今できる「ストップオーバー・フライトの中継地」としての役割だ。ストップオーバー便を利用する東南アジアからの観光客による観光収入が小さくないことから、空港が関係省庁と協連携してこれらのサービスの利点を探るという。また、クアンニンはが地元企業などと連携し、空港からの日帰りツアーなどの新商品を企画している。

リゾートなどを手がける観光不動産業大手で、ドンバン国際空港の開発にも投資したサン・グループは、クアンニン省にサン・ワールド・ハロン・コンプレックス、クアン・ハイン温泉リゾート、サン・プレミアビレッジ・ハロン湾などを運営。空港を利用した観光客に、これらの複合施設の割引券を提供している。

同社のダン・ミン・チュオン社長は、「弊社プロジェクトをクアンニン省で展開できるのはとても名誉なことだ。今後は、航空会社や旅行会社がクアンニン省経由のツアー商品を開発する際の支援業務にも力を入れていく」と話している。