東北部クアンニン省を訪れたことがある人なら、世界遺産のハロン湾については聞いたことがあるはず。しかし、中国との国境地帯に広がるビンリエウ県を知る人はまだまだ少ないのではないだろうか。今、同県が新たな観光スポットとして注目されつつある。

写真㊤=美しい山々がどこまでも続くビンリエウ県

同県は、ハノイの西270㌔に位置し、山岳の豊かな自然の中、ザオ族やティ族など多くの少数民族が暮らす。気候的には夏場も比較的涼しく、冬は厳しい。民族色豊かなイベントも多く、中でもテト(旧正月)の後に開催されるハイランド・フェスティバルは有名だ。

同県には現在、18の宿泊施設(計197室)のほか、ア・ダオ、ソン・ムックなどホームステイができる村も多数ある。同県人民委員会によると、2015年には3万3000人だった観光客は、19年には5万3046に増加、200億ドン(約9300万円)を地元に落とした。


豊かな自然の中、数々の少数民族が暮らす

同県の人民委員会が観光長期ビジョンに着手したのは15年。山岳地帯であることや都心部から離れていることなどから、地元では何世代にもわたって飢餓や貧困の軽減に追われ、歴史や自然の美しさといった地域資源の見直しというところまで手が回っていなかった。

当初は観光振興を進めることに懐疑的な見方も多かった。しかし、同県委員会前書記でクアンニン省人民委員会のカオ・チュオン・フイ副委員長は、今こそ観光に力を入れるべき時が来たと判断。地域のリーダーともにと、観光を含む地域の発展について話し合いを始めた。これを受けて、県人民委員会は観光発展のための計画を策定するとともに、運営員会を立ち上げ、文化的遺産の保護やPRについて、地域の少数民族にも周知した。


かれんなソ(ツバキ)の花は、県のシンボルになっている

今年は新たに国境のゲートがオープンすることや、さまざまな観光プロジェクトの実施が予定されるなど好材料が多く、期待が集まる。同県人民委員会のグエン・チ・チュエット・ハン委員長は、「地域は、近い将来、より多くの人をひきつける観光地となるだろう」と自信をのぞかせている。