大規模バナナ農園が成功 少数民族250世帯に就労の機会 中部高原ヴー・ボン地区

ベトナム南部の中部高原に位置するヴー・ボン地区はこれまで、ベトナム国内でも特に貧しい地区のひとつだった。だが村の250戸の家族らは今年、十分な現金収入を得て、楽しいテト(旧正月)を迎えることができた。昨年同地区に開設された大規模バナナ農園の成功のおかげだという。

ヴー・ボンは、中部高原のクロンパック地区に位置する貧困地域の一つ。中部高原地方最大の都市、バンメトートから約60キロ離れている。周辺は少数民族が多く暮らし、定住地をもたず、一帯を自由に移動して生計を立ててきた少数民族のカオラン族やタイ族、ヌン族、セダン族、バンキエム族、ザオ族、モン族などが、厳しい生活を余儀なくされてきた。

生活や経済が劇的に改善されたのは、農場経営を展開するKDグリーンファーム社が、ここで約100ヘクタールを開拓し、南アメリカ産キャベンディッシュ種のバナナ栽培に成功したからだ。これが雇用を生み、250家庭の経済状況は劇的に改善した。

同社のホー・タイ・ビン副社長によると、栽培しているバナナは耐病性が高く、香りや味が良いうえ、一房の重さが15~18キロになるなど収穫効率も優れているという。農園では昨年4月に栽培を始め、昨年末までの収穫で、中国向けに約3700トンのバナナを輸出した。近く、2回目の輸出が計画されている。

農園を取材すると、近代的な農園や加工場内には、何百人もの労働者がおり、みんな楽しそうに仕事をしていた。同社の労働者らの月給は、約470万から530万ドン。この現金収入は、各家庭の生活安定の大きな助けとなっているという。

農園は、近代的な経営が特徴だ。広大な農園には、大量のバナナを効率よく運搬するため、15キロメートルにわたって、滑車を利用したつり下げ式の運搬機が敷設され、省力化や効率化に貢献している=写真㊦。

適度に熟したバナナは枝から切り取られ、実に傷がないようにナイロンカバーをかけられて、運搬機で加工所に運ばれる。

加工所ではバナナを房ごとに切り、4つのタンクで水洗いした後、検査する。その後、13キロごとに箱に入れて包装し、出荷まで冷蔵所に保管する。

一見すると順調に成長してきたかに見える農園だが、設立直後には取締役会のメンバーが突然資本を撤退するなど、軌道にのるまでに多くの危機に直面したという。電気や水、道路などのインフラも未整備だったため、同社が自力で整備して切り抜けたという。

一帯には、14の少数民族に属する約1万8000人が暮らしているという。ヴー・ボンの他にも、9つの地区が貧困に直面しているが、地元の人民委員会代表者は、「この事業の成功で、今後、多くの事業が展開されるのではないか」と期待している。