満開の花栽培地「花の村」、ベトナム南西部 観光客も誘致

ベトナム南西部は、花卉の栽培が盛んで、いくつも花の栽培で有名な「花の村」がある。ドンタップ省のサデック村、メコンデルタのカントー市にあるフー・トー・バー・ボー村、ベンチェ省のカイモン村、ティエンザン省のミートー村などだ。この時期、一帯の花や観葉植物の栽培は最盛期を迎え、ホーチミン市などへと出荷されている。

サデック村は、全国各地へ花を供給する「メコンデルタの花王国」として知られる。村には、花卉栽培に従事する世帯が2300軒ほどあり、500ヘクタールを超える農園で2000種以上の花々が栽培されている。花の栽培は、サデックの農産物生産高の60%を占める。今年は、さらに菊やスミレ類の新種、青いバラなど、従来は市場に出回ることのなかっためずらしい新品種の栽培にも踏み切った。

長年にわたって、サデックの花農家らは、花や観葉植物の栽培と、観光を組み合わせてきた。サデック村は、花が咲き乱れる独特の風景から、春を中心に多くの観光客が訪れ、ベトナム南西部に観光客を誘致する重要な観光資源となっている。

ベンチェ省チョーラック地区にあるカイモン村も美しい花の栽培地だ。村は、ティエン川、ハムルオン川、コーチェン川に囲まれた約40ヘクタールで、3400軒が花卉栽培に従事している。村は毎年、約400万本の花を出荷しているほか、南部のテト(旧正月)に欠かせない黄梅の鉢植えやさまざまな植物の盆栽の栽培でも有名だ。

ミートー市は大規模な花の栽培地で、地元に花を出荷するほか、近隣の省やホーチミン市の花の供給地でもある。花の需要の大きな伸びを受け、ミートー市の花卉栽培は大きく成長した。栽培品種を多様にしたほか、新しい栽培技術の導入で開花時期を調節し、年間でももっとも花の需要が多いテト(旧正月)の期間に満開になるよう、開花時期の微調整ができることも強みだ。

北部での桃の花と同様、梅の花は南部のテトには欠かせない花だ。ヴィンロン省のフォックディン村は、このテトの梅の花の産地として古くから名高く、2009年には伝統工芸村にも認定されている。ヴィンロン市の中心部から3キロほど離れたところにある村では、樹齢100年を超える梅の古木が550本守られており、栽培されている樹齢50~100年の比較的若い梅の木は計1000本にのぼる。

ホートバーボー村は、カントー市のビントゥイ地区にある。ここでは230軒の花栽培農家が付加価値の高い梅や菊、ヒマワリやダリアなど十数種類の花を栽培している。最近では新技術を応用した栽培に積極的に取り組んでおり、インドネシア産のデイジーやアメリカ産マリゴールド、タイから取り寄せたサボテン類など珍しい植物の栽培を手掛けている。

ベトナム南部や南東部の人々にとって、梅の花やさまざまな菊科の花を中心に、赤や黄色の花を好み、幸運のシンボルとしている。カラフルな花々が咲く広大な花畑は、春を迎えた地域を活気づける。 この時期、ティエン川やハウ川には、これらの花々を満載して売買する小舟が無数に浮かぶ。その、この光景もまた、春を迎えたベトナム南西部の風物詩として、花が大好きなベトナム人観光客らを集客する資源となっている。