経済発展けん引する産業集積地、159カ所に拡大へ ハノイ市が計画を発表

近年、ハノイ市では中小企業の製造拠点や伝統工芸品の製造工房などを集めた「産業集積地」が経済発展をけん引する存在に成長している。同市はこのほど、「2020年ハノイの産業集積地発展マスタープラン」を発表。今後、さらに市を発展させる動力とするために、集積地を新設して159カ所にまで増やす計画を明らかにした。

◇製造拠点の集積で経済を発展
ハノイ人民委員会の報告によると、2019年末現在、ハノイ市内や郊外では17の町や県で、70の産業集積地が稼働している。それらの合計面積は1686ヘクタールに達し、3864の企業や工房が集まって、60000人の雇用を創出、市の予算に1兆1000億ドンの貢献を果たした。クアット・ドン・エクスパンション、ゴックホイ、トゥーリエム、フンなど26カ所は、インフラ設備なども整った最先端の産業集積地だ。

家族経営の中小企業がより広い製造場所を求めたり、同じ業種が地域的に集まっていた伝統工芸村が発展したりして、生まれた産業集積地は、工業生産の効率化を進め、ハノイの経済発展を大きく前進させた。これらの生産拠点が込み合ったハノイ市内から移転して郊外などに集積したことで、住宅地内の工場が減り、環境汚染が減少するなどの副次的な効果もあった。

アインズン投資紡績製造社のボー・ベト・ズン社長は、「産業集積地は、企業の生産にとって最適であるうえ、物流サービスの面でも有利だ」とその利点を話す。

しかし、課題もある。ハノイ市の商工局が実施した工業集積地の実地評価によると、多くの集積地は土地を企業に貸し出すだけにとどまっており、企業が生産設備などの投資を負担させられることから、全体的なインフラ整備が不十分になるケースも多いという。

例えば、産業集積地からの排水処理施設なの建設などが一例で、大きな課題になっている。今までのところ、70カ所の産業集積地のうち、適切な排水処理設備が整っているのは26カ所にとどまる。ハノイ市郊外タインチ県のタンチュー工業集積地のように、2007年に排水処理施設の建設が始まったが、いまだに完成されていないという事例もある。防災防火の準備や設備も配慮が足りていないインフラだ。さらには、ズィエン・タイ工業集積地(トゥオン・ティン県)のように、開設されたものの、5年後の2017年に、資金難から運営そのもが中止されてしまった産業集積地もある。

ハノイ市商工局のダム・ティエン・タン副局長は、「初期のころには、集積地に手っ取り早く、企業を呼び集めるために、環境保全や防災などへの配慮を怠った集積地も少なくない。多くの産業集積地は、中小規模の事業者の集積地や手工芸村の発展形であり、環境や防災面での大規模な施設投資ができる余力がなかった」と指摘し、状況改善にあたっている。

◇最新型の集積地を159カ所に拡大
ハノイ市商工局は、2020~2030年の期間を対象に、これらの集積地での技術インフラ整備を計画している。56カ所の産業集積地で排水処理場や上水場、集積地内部の道路などのインフラ建設に計40億ドンを投資する予定で、地元の地域行政当局がこの実施にあたるとした。

このほど承認された、「2020年ハノイの産業集積地発展マスタープラン」には2030年までのビジョンが盛り込まれた。これによると、ハノイ市は産業集積地を159カ所にまで拡大する計画で、実現すれば総面積は3204ヘクタールに及ぶことになる。これらの施設が稼働に乗れば、生産拠点を求めている企業をはじめ、新たな生産拠点やビジネスを多く呼び寄せることが可能になるだろう。

これまでのところ、ハノイで新設された工業集積地は19カ所で、さらに14カ所の開発についてハノイ市人民委員会が承認を求められており、6カ所でハノイ市商工省が必要手続きを検証している。新たな集積地の設立は、産業や手工業の生産を躍進させ、社会の経済的発展に貢献すると期待される。

ハノイのマスタープランは、総投資資本が49兆ドンに達する見込み。このうち2020年には約34兆ドン分の投資の実施が予定されている。