知的財産権で農産物などの付加価値アップ 各地で意識高まる

ベトナムの農産物や魚介類、手工芸品などの価値や市場競争力を高める手段として、知的財産権(IPR)の構築や登録、保護の促進が注目されている。科学技術省傘下の知的財産局によれば、各地方当局が知的財産の発展プログラムなどを企画しており、すでに118種の農産物などが保護できているという。

知的財産権を守るための活動はここ数年で、具体的な成果をもたらすようになり、商標登録や工業所有権に関心をもつ組織や企業、団体などが徐々に増えている。工業所有権の申請は3万6021件数に及び、このうち3053件に保護証明書が付与された。さまざまな地域で、主要な製品分野や優位に立てる製品、地元の特産品などの掘り起こしが盛んにおこなわれ、商標取得が進められた。この結果、品質や生産性の向上とともに、製品価値や競争力も高まってきたという。

有名な実例が、ホーチミン市の南西にあるベンチェ省のココナッツだ。同省では栽培に積極的に科学技術を導入する一方で、産地特定によって農産物の価値を高める知的財産権の一種、「原産地表示(地理的表示)」を導入し、「ベンチェ産ココナッツ」の販売促進に力を注いだところ、年間輸出額が2億ドルに達した。これに伴い、地域のココナッツを原材料とした菓子類などの加工食品も、同省の工業生産の約20%、総輸出額の25%を占めるまでに成長した。現在では省内の7万2000ヘクタールの畑で16万3000軒の農家がココナッツ栽培を手掛けており、年間生産は約8億個に膨らんでいる。

メコンデルタに位置するハウザン省では、ナイフフィッシュ(ナギナタナマズ)に、「ハウザン産」の団体商標をつけたことで、他地域でとれた魚よりも価格を3~4割引き上げることに成功した。同様に、クアンニン省では、「クアンニン産」という地理的表示によって、さまざまな商品のブランド価値が高まり、特に農産物の販売価格は20~50%も上昇した。

ベトナム最南のカマウ省では、「カマウ産エビ」も団体商標の取得でブランド価値を上げている。販売価格が20%上がり、養殖業の拡大で何千もの安定した雇用につながった。北中部ゲアン省では省都のヴィン近郊で採れる「ヴィン・オレンジ」が、原材料から消費者に届くまでの経路を証明する「トレーサビリティ表示」を得たことによって、以前より卸値が25~30%引き上げられたという。

このように、さまざまな知的財産の取得が、地域の農産物などの価値を高めている。また、企業にとっても、自社の発明や登録商標、工業デザイン、著作権の保有が、企業と製品の価値を高め、市場占有率(シェア)の拡大にもつながる。ベトナムが国際社会に統合するためにも、今後は国内だけではなく、海外における知的財産の保護が重要になるだろう。新規の市場参入や、競争上の優位性の創出、事業権の保護などにつながるため、国内外での知的財産権の保護や登録が急がれる。

課題もある。地方では、その取り組みの知名度の低さや重要性の認識の不足、登録に時間がかかってしまっているようだ。さまざまな分野をまたいでの連携も不足している。さらに、今後は、巧妙化、複雑化する知的財産権侵害を取り締まるための対策も求められている。