コロナによる失業者の支援を約束 ホーチミン市 上半期に32万人が解雇に

新型コロナウイルスの感染拡大によって、ベトナム南部の経済の中心地、ホーチミン市では、上半期だけで32万人を超える労働者が解雇されたほか、減収による生活困窮家庭も出はじめている。ホーチミン市の労働・傷病兵・社会局では、今年下半期の雇用維持や労働者の収入保障を進める一方、すでに失業した人々の救済措置をとる構えだという。

同局のレ・ミン・タン局長がこのほど、方針を明らかにした。業種別では観光や関連サービス業がもっとも新型コロナの打撃が大きく、4400社が減収となり、解雇者は12万人に達すると見込まれる。

労働者の権利を守るため、市では企業支援のためのワーキンググループを設立。「企業側は最低45日間の猶予をもって労働者の解雇を伝えなければならない」「労働者が高齢者や妊婦など配慮が必要な場合は、追加の支援策を講じる」など、労働者を守る法的規定が順守されるよう目を配っていく。

すでに、ホーチミン市ビンタン区に工場をもつ台湾系の靴製造業、ポウユエン(宝元)社は、2800人の工員を解雇。このうち745人はホーチミン市にとどまって働くことを希望しており、タン局長は、「これらの人々のために、同業種の仕事を見つけたい」と話す。ホーチミン市労働・傷病兵・社会局はまた、同市ゴーヴァップ区のフエフォン製靴社から解雇された2222人の労働者の再雇用についても、区内の企業8社と交渉中だ。

さらに、台湾の家具メーカー、クーチー社が800人規模の人員削減を予定していると聞きつけ、先回りして、採用の意志がある木工関連企業を再就職先として探し始めている。解雇された職人らには、必要に応じて、職業教育センターで訓練なども受けさせる方針だ。

市当局によると、新型コロナの影響を被った市内の企業8400社のうち9割は、ホーチミン市人民委員会の政令02号と、政府による62兆ドン(約27億ドル)規模の経済支援の対象となる可能性がある。ただし、実際に支援を受けるには、「雇用の維持」が条件となっている。企業が雇用労働者を解雇しない場合にはさらに、労働者の社会保険料や労働組合の基金などの支払いも、年末まで期限が延長される。

ホーチミン市統計総局の調査では、同市の企業1万6300社のうち、1万4000社が「新型コロナで上半期の経営に影響が及んだ」と答えている。さらに8400社では事業運営を一時停止し、多くの労働者の解雇に踏み切らざるを得なかった。

今年下半期にも新型コロナの感染拡大が継続する場合、サービス業や製造加工業、建設業などの分野で、さらに4800~5000社に影響が出る見込みだ。それに伴い、新たに16万~18万人の失業が生じる可能性があるという。

グエン・スアン・フック首相はこのほど、失業で収入が途絶えた労働者や、新型コロナの感染によって打撃を受けた企業などに焦点を当てて、62兆ドン規模の救済措置を決定。対象となる約2000万人への支給を承認した。ホーチミン市も6月末以降、5600億ドン規模の金銭的援助を用意しており、感染拡大によって影響を受けた54万2000人のうちの51万人以上に支給されるという。

同市は今年3月には、学校休校措置によって収入や仕事を失った学校教師や幼稚園教諭、教育関係者60万人を対象とした支援措置も承認している。