ハイテク導入で成長躍進する農業分野 ホーチミン市

ホーチミン市の農業は、域内総生産(GRDP)の年間成長率が6%を超え、1ヘクタールあたりの平均生産額がこのほど、5億5000万ドンに達した。これは、農産物生産の国内平均の約5倍に相当する。目覚ましい成長は、ハイテク技術導入や教育訓練の実施などによる近郊農業の生産高の向上のための取り組みと、経済的付加価値の高い農産物生産の拡大が、大きく寄与しているという。

◇農産物の価値向上
ホーチミン市は、「年間の地域総生産成長率6%」「1ヘクタール当たりの平均生産額6億ドン達成」などを、目標として掲げてきた。

農薬使用などを減らし、付加価値を高めた安心安全な野菜の生産面積を2万1150ヘクタール、花卉や観葉植物の畑を2510ヘクタールに、それぞれ拡大する一方で、環境保護の観点から自然林を保護し、土地の17.86%を森林のままで残している。また畜産部門では、7万頭の乳牛飼育、20万頭規模での養豚を目指し、漁業では、魚介類養殖で6万2760トンの収穫量、2億2000万匹の観賞魚飼育を計画。栽培や養殖の手法にもこだわり、ベトギャップ(VietGAP、ベトナム版農業生産工程管理手法)の基準を満たす事業を養殖漁業で1700軒、野菜や果物の栽培では全体の80%がベトギャップ適合になることを目指している。

ホーチミン市農業農村開発局によると、これらの目標達成のため、生産効率の悪い水田での稲作やサトウキビ栽培などをやめ、転経済価値の高い農作物の栽培や畜産などへの転換換が急速に進み、農業分野の生産価値の向上に役立っているという。

ホーチミン市は、いくつかの主要農産物に焦点を当てて転換を進めている。野菜や花卉、観葉植物の栽培▽乳牛の畜産と乳製品製造▽養豚▽食用魚介類や観賞魚の養殖―などが、それにあたる。これらの主要農産物の生産額は、市の農業全体の70%に相当する年間13兆8000億ドンの生産高を実現している。

市の農業生産価値を高めたのは、最先端技術の導入とベトギャップ基準を満たす栽培の増加だ。1ヘクタールあたりの年間生産額でみると、葉もの野菜は10億~14億ドン、果物は6億~7億ドンだ。熱帯産のランが20億ドン、エビ養殖は27億~30億ドン、観賞魚の養殖は100億140~億ドンとなっている。乳牛の畜産は、20頭あたりの年間生産高が8億ドンだった。ハイテク農業は、毎年約30~40%の生産益の成長を実現しているのに加え、多くの個人投資家や企業の参入を誘致した。

ホーチミン市農業コンサルタント支援センター(HCACS)は、地域と協力して、市内各地で安心安全な農産物の見本市などを開催し、年間367億VND以上の収益をあげている。

◇職業訓練や組合設立…多方面の農業振興

同市農業農村開発局のグエン・フック・チュン局長は、バイオ技術の応用によって品質のよい農産物の新種開発や畜産での品種改良を進め、「いずれは地域独自の農産物の苗や畜産品を扱うセンターの開設を計画している」と、今後の市の農業発展の展望を語る。

また、第4の産業革命がもたらすチャンスを生かすために、科学技術やハイテク農業の発展に力を入れて、人材育成につなげる。さらに、農業と観光を結び付けたエコツーリズムの開発に力を入れたり、生産協同組合の役割を強化したりすることも、持続可能な開発の達成や農家の収入増につながる施策として、業界を挙げて取り組んでいくとしている。

新たに協同組合などの設立と組合の支援でハイテク技術を応用した農業や魚介類養殖業を実現しやすくするとともに、専門技術を学んだ大卒の組合職員らの優遇も図る。農家が生産地域を拡大でき、生産コストを削減して収入を増やせるように、新たなハイテク農業生産モデルの取り組みも実施していくという。

ホーチミン市労働傷病兵社会局のグエン・バン・ラム副局長は、「インダストリー4.0を背景に、農村労働者向けの職業訓練の需要が増加している」と指摘。同市の農村労働者約6400人が、今年じゅうに何らかの職業訓練を受けられるよう計画を策定している。

ホーチミン市ハイテク農業団地のトゥ・ミン・ティエン副理事長が重要視するのは、市場ニーズの研究と、得られた情報の農家への提供で、市の担当部局などにその実現を求めている。

「詳細な情報を手に入れることで、農家は、市場が求める農産物を生産することができる」とティエン副理事長はいう。また、職業訓練についても、状況に応じた適切な訓練と、オンライン教育などの多様な教育の機会を提供するべきだと強調する。