台風被害最小限に 石油精製の中枢クアンガイ省 ペトロベトナムなど企業が早期対策

先月末に発生した台風モラヴェ(日本の台風18号)は、今年ベトナムに上陸した9つ目の台風となり、中南部沿岸のクアンガイ省などを直撃した。一帯はベトナムの石油精製の中枢施設が集中するが、国営ベトナム石油ガスグループ(ペトロベトナム)などが迅速で的確な防災措置を展開。行政と連携し、地域住民の避難所も開設するなどして、同規模の台風と比較して被害を最小限に食い止めることができた。

先月28日にベトナムに上陸した9つ目の台風、モラヴェは、最大風速が時速115キロに達する暴風雨をもたらした。ビンディン省では強風で3軒の民家が倒壊して2人のけが人が報告されたほか、485軒で屋根が損壊、学校も建物の一棟が大きな被害を受けた。

自然災害防災・制御中央委員会によると、同台風の激しい暴風雨は、中部のクアンガイ省やクアンナム省、中央高原など計10の省の、400を超える自治体で停電の被害ももたらした。電力出力がダナンでは通常時よりも47%、クアンナムでは通常時と比べて71%もダウンする事態となった。また、クアンガイでは省全体で、ビンディンでも93%世帯が停電した。クアンガイ省にあるズンクアット経済区も激しい風雨と高潮に見舞われ、多くの民家の損壊や事務所などの建物で屋根が吹き飛ぶなどの被害が報告された。

そんななか、ペトロベトナムは、台風接近の段階で対策チームを結成し、地域の行政当局と連携して対策をはじめた。

ズンクアット石油精製所のカオ・トゥアン・シー副所長は、ペトロベトナムや、同社傘下でズンクアットの運営を展開するビンソン石油精製・化学公社から事前の指示を受け、自家発電の準備など十分な防災対策を行ったという。「おかげで、台風直撃にもかかわらず、ズンクアットは安定操業を続けられた」。精製所は、ポンプ室の屋根が損壊したほかは、仮設の小屋や樹木が倒れるだけに被害が抑えられたという。

一方、台風上陸前日の10月27日には、ビンソン石油精製・化学公社が、ビンソン地区ビンハイの行政当局と協力して、ヴァン・トゥオン集会場に避難場所を開設。台風の被害が予想されたフォック・ティエン村とビンハイ村の住民約400人を事前に避難させた=写真。同時に、早い段階から、被害が出た場合の地域への支援策を検討した。

近隣にあるズンクアット造船も、台風の上陸前に、さまざまな対策をとったおかげで、事業本体への被害はなかったという。ズンクアット造船は「洪水・台風災害防止委員会」を自社内で設立し、作業場や倉庫などを点検。石油保管庫や設備、機械などをチェックして必要な固定作業などを行い、倒れる可能性があった樹木を切り倒したりした。

造船会社、「ガリラヤ7」でも、船主および製造施設と調整を行い、船の固定など、停泊中の船の暴風雨対策を徹底。浮きの状態をチェックし、高潮などに備えて24時間、ポンプ場の運転を継続するなどして被害を食い止めたという。