ハノイ市、伝統工芸村のPRに尽力 企業協力や職人育成で

ベトナムの首都、ハノイ市には、伝統工芸品などを作る職人らが集まる工芸村が、1350カ所もある。ここで産出される工芸品はハノイ市の重要な輸出品であるにもかかわらず、産業としての発展は遅れていることから、ハノイ市は、工芸村のブランディング支援や職業訓練などを計画し、工芸村の近代化と持続可能な発展を目指している。

◇バッチャン陶芸の博物館
バッチャン焼きはハノイ自慢の工芸品であるだけでなく、国際的にも名高い陶器だ。その美しさや技術をPRしようと、今年じゅうに開館予定のバッチャン陶芸博物館は、そのユニークな外観のデザインも手伝い、今後ハノイでももっとも注目を集める施設のひとつになりそうだ=写真㊦。

同博物館のすり鉢状の7棟の建物は、何層にも年度を重ねたような模様が刻まれた、湾曲した外壁でつながっている。内部の展示フロアは3階に分かれており、1階にはバッチャン焼きの作家らの優れた作品を披露する。2、3階は、バッチャン村の陶磁器の開発と創作を展示。訪問者はその歴史の概要などを学ぶことができる。また、屋上にはイベントやパフォーマンスなどに使える屋外ステージがある。

この博物館は、バッチャン焼きのPRを目指す「ベトナム工芸村の真髄」と題された、クアンビンセラミック社とハノイ手工芸村協会の共同プロジェクトの一環として建設された。クアンビンセラミック社のハ・ティ・ビン社長は、訪問先の日本で一村一品運動の効果を実感し、博物館設立を思いついたという。ビン社長は「博物館を通じて、バッチャン村をはじめとしたベトナムの工芸村の知名度が上がると期待している」と話す。

◇工芸村を組織的に発展
ハノイ市は古くから伝統工芸の中心地として知られ、ベトナム国内でも最も多くの工芸村が集まる。これらの工芸村で作られた作品は、海外市場へと輸出されており、その輸出総額は毎年数十億ドルにのぼり、郊外の農村部の就労先を供給している。特に女性にとっての貴重な仕事となっている。

しかし、工芸村の発展の現状は思わしくなく、持続性に乏しい。生産規模が小さく、製品の品質や美的な仕上がりも高いとはいえない。消費者市場も拡大が難しく、生産施設や短期的な利益を上げることに終始しており、製品の伝統的な価値をPRすることに注意を払っているとはいえない。

経済が国際的に統合し、競争が激化するなかで、新型コロナウイルスの感染拡大がもたらす困難も加わり、伝統工芸品製造を続け、持続可能な発展を確実に実現することが、ハノイの工芸村にとって最も重要な課題だ。

社会経済における工芸村の存在の重要性を痛感したハノイ市人民委員会はこのほど、工芸村の発展計画を承認した。これによると、ハノイ市は21カ所の工芸村を再生させ、さらに17の他の工芸村で観光と結びつけた開発を目指しており、2030年までには同市の工芸村を1500カ所に増やすことを視野に入れている。これらによって、約100万人の新規雇用を創出し、同じく2030年までに職人らの年間収入を5000万~6000万ドンに引き上げたい考えだ。

これらの目標達成のため、市は企業と工芸村との接点を強化し連携を促しつつ、貿易展示会や専門見本市などへの工芸村の参加を支援。技術改革を進めるための投資資金を提供し、高度技術を適用する生産施設を優遇するなどの方針も決めた。 さらに、市は海外の貿易促進センターやベトナム貿易事務所とも調整を促し、海外各国に工芸村の製品の数々を積極的に紹介していく。

さらにハノイは、10の工芸村がブランディングを促進するのを支援し、13,100人の農村労働者を対象とした職業訓練を組織している。さらに、2400人の小規模企業経営者や生産施設所有者の管理経営能力の向上も支援するとした。