石炭採掘の効率性、従来の2倍に 新技術導入で、クアンニン省

ベトナム商工省と、国有企業のベトナム石炭鉱産グループ(ビナコミン)、傘下の採掘科学技術院はこのほど、地下採掘現場の効率化手法をさぐる調査を行った。ベトナムの石炭採掘を地下型に転換し、機械化と安全性を進めて生産効率を上げるのがねらい。2020~2023年の機械化モデル完成を目指し今後、研究結果を実際の生産現場にフィードバックしていく。

◇技術選択の基準は?
ベトナムの石炭採掘は、国のエネルギー保障を維持するに当たって重要な役目をはたしており、2025年までにベトナムのエネルギー供給源の約2分の1が石炭になると予想されている。石炭の埋蔵量が特に多い北部のクアンニン省では、風光明媚な観光名所として外国人観光客らを多く誘致してきたハロン湾が炭鉱に近いことから、湾内の自然環境を守ろうとする動きが強まり、露天採掘は徐々に規模が縮小されている。2025年には全体の採掘の73%が地下採掘になり、2030年には露天掘りが完全に廃止されるという。

採掘現場が地下に深化することで、現場が狭くなる、傾斜が生じるなど、地下炭鉱の地理的な条件や使える技術が制限される懸念がある。そのため、新たにこのような厳しい条件に適応できる機械技術が試用された。このおかげで、クアンニン省の石炭採掘量は今後数年間で2倍に増えると予想されている。

石炭の産出を増やし、生産性を上げ、同時に労働者らの安全性を高めようと、プロジェクトを指揮するレ・ズック・グエン博士とそのチームは、昨年1年間、クアンニン省の石炭地下採掘現場での機械技術の応用評価などを行ってきた。ベトナムの採掘現場とよく似た海外の採掘場で使われる技術や条件なども、基盤として参考にしたという。

プロジェクトでは、これらの経験や技術に基づいて、クアンニン地域の各石炭採掘に適した機械化を、4段階に分けて実施することを提案した。また、部材を3角状につなぎ合わせて強度を確保するトラス構造による地下現場の建設を導入。掘削機なども、それぞれの地下採炭場に合った、最適な機器を利用できるようにした。これによって、機械化された炭鉱での石炭産出は、昨年の383万トンから、2023年に798万トンに増え、施設数も2020年の10カ所から2023年には23カ所に増える見込みだ。

◇労働環境改善と生産性向上
石炭層が多いクアンニン省の地質的条件や、どのような機械化技術を選択するかといった条件を検討し、今回のプロジェクトではZY2400 / 1 4/ 32Qと呼ばれるトラス構造を採用。MG160 / 381-WDタイプの石炭掘削機などが、現場に導入される。

プロジェクトで採用されたのは部分的な機械化技術だったが、その導入によって、採炭量は1カ月2万8131トンに達し、経済や技術などの指標が改善した。また、労働生産性も、1営業日あたりの生産が28.9トンに増えた。同条件下でダイナマイト発破を利用した露天掘りをした場合、機械化モデルの生産量は2〜3倍になった。労働生産性も従来方式よりも3〜6倍高くなり、労働条件と現場の安全性が大幅に向上した。

クアンニン省における他の機械化された採掘現場と比較しても、今回のハロン市における機械化は、遜色のないものだった。だが、特にこれまで最先端とされてきたクアンハイン炭鉱やケチャム炭鉱などの採炭生産ラインを超える生産性や技術力が獲得されたという。