クアンニン省に海洋保護区設立へ 実現に向け、当局や住民らがネット会議

ベトナム海洋生物保護・地域開発センター(MCD)は、豊かな海洋資源と生態系を誇るクアンニン省コートー県チャン島(Cô Tô-Đảo Trần)一帯に、海洋保護区(MPA)を設置することを目指している。その具体化に向け、今月17日、ベトナム農業農村開発省傘下にある水産局の水生資源保護開発部、クアンニン省の水産部、地元住民らも参加して、オンライン形式の意見交換会が開催された=写真。

会議は、国の計画にもとづく海洋保護区設立に関するガイドラインを、省レベルで検討し、海洋保護区設立の具体的な手順などを話し合うほか、地元住民らの意見なども協議することがねらいだった。海洋生物保護・地域開発センターの関係者らをはじめ、水産局水生資源保護開発部、クアンニン省の水産部など20近い組織や団体の関係者らが出席した。また、地元の住民のほか、クアンナム省ホイアン沖の諸島部に開設された「クーラオチャム海洋保護区」など、既存の保護区の関係者や、チャン島同様に保護区の設立に向けて活動している地域の関係者なども加わった。会議は全国のメディアにも公開された。

コートー県の諸島部の海洋保護区設立は、ベトナムにおける海洋保護区のネットワーク化加速を目指す海洋生物保護・地域開発センターのプロジェクトのひとつ。コートー県チャン島の海洋保護区が設立され、正式に承認されることを目指す一方で、ベトナム全国の海洋保護区の横のつながりを強め、海洋保護区の設置や運営に、関係当局や民間組織、専門家や地域住民らの活発な参画を目指している。チャン島のプロジェクトは、世界的な非営利組織、ロックフェラー・フィランソロピー・アドバイザーや、世界で海洋保護を展開する助成団体、OCEAN 5などが資金援助している。

水産局水生資源保護開発部のレ・チャン・グエン・フン副部長は、「漁業資源の保護が、かねてから、ベトナムの水産部門のもっとも大きな懸念のひとつだった」としたうえで、「海洋保護区の設立は、漁業資源の重要な保護手法のひとつだ。全国で同時多発的に、効率的に行われるべきだと思う」との考え方を示した。コートー県チャン島を含めた各地の海洋保護区設立についても、「水産局水生資源保護開発部は、そのような動きや、運営しようとする地域や組織を導き、支え、ともに歩んでいく考えだ」と応援。保護区設立の長期的な展望として、サンゴ礁や独特の潮流が存在する砂浜や岩場、マングローブ原生林、貴重な海洋生物の繁殖地や魚介類の産卵場所など、特殊な海洋エコシステムを抱える場所に加え、緊急に再生や保護が必要な場所などを候補地として挙げた。

海洋生物保護・地域開発センターのホー・チー・イェン・トゥ副所長は、ベトナムの「持続可能な海洋経済発展計画に関する2030年までの国家戦略と2045年までのビジョン」を紹介し、海洋や海の生態系を守りつつ経済発展を目指す、いわゆる「ブルー・エコノミー」が主軸になっていることを確認した。「私たちのプロジェクトは、コートー県チャン島の海洋保護区設立を加速させるための技術的な支援を提供すると同時に、科学者や海洋保護の専門家、社会団体や市民団体、地域の住民組織などの参画を促す。クアンニン省当局の前向きな行動が、政府の指導や支援を受け、地域住民の参加を得て、保護区の実現を成し遂げられると信じている」と語った。

また、クアンニン省農業農村開発局水産部のドー・ディン・ミン部長は、新型コロナウイルス感染が拡大するこの時期に、国の指導と支援をはじめ、海洋生物保護・地域開発センター、専門家らがコートー県チャン島の海洋保護区設立に寄せてくれた支援に対し、感謝の意を述べた。そのうえで、「すでに設立された海洋保護区の経験を下敷きに、必要な書類や手続きなどの準備を進めている」として、近く海洋保護区設立が正式に発表されるとの見通しを示した。

計画では、今回の会議後、経験豊かな専門家らに協力をあおいで必要な環境評価や承認を行い、コートー県チャン島の海洋保護区設立に向けたクアンニン省の動きが本格化する予定だという。これを契機に、国民に対しても、「エコブルー」実現や、海洋保護区の設立の意義などの情報発信を続け、市民らの認知度向上をはかりたい考えだ。