中小企業は支援策の活用を ハノイ市が促進

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が長期化、深刻化することで、ハノイ市の企業の多くが、特に中小企業は、資本の枯渇などの厳しい状況に直面した。この危機的状況を打破するためには、市や行政当局による優遇策と財政支援の実施が必要だが、業界では、加えて企業側の積極的な関与と努力も呼びかけている。

◇障壁を乗り越えるために
ハノイ市当局や企業連合などがこのほど行った調査によると、中小企業を中心とした市内の1500社の企業が、新型コロナウイルスの感染によってサプライチェーンが寸断されるなど、生産や企業活動、に影響を受けたと回答したという。影響は製造加工業に始まり、銀行や保険なの金融業、物流、サービス業などにも広がっている。原材料の供給源の確保の難しさなどが影響し、コストが上昇したことに加え、従業員らの新型コロナ予防や感染対策費などの増加にも直面することになった。

ハノイ市統計局のデータによると、今年1~8月の8カ月間に、同市の2000社会以上の企業が廃業。業務停止登録を行った企業も9300社あったが、7400社は事業を再開したという。

先日、「中小企業向けの新型コロナ対策」と題して行われたオンラインセミナーで、企業財務の専門家であるグエン・チー・ヒエウ氏は、「今年年末までにベトナムの新型コロナ感染が制御されなければ、全国の倒産・廃業企業は、10万社にのぼる見込みで、その大半がハノイの企業だろう」との見方を示した。
企業倒産の主な原因は、資本金の不足だ。新型コロナによって「資産の流動性が失われたほか、人の移動制限や需要低迷、供給過多などが重なった。輸出も困難となった企業は、いまや収入源を断たれている」とヒエウ氏は危機感を募らせる。

このような状況を背景に、専門家らは企業に対して、不必要な経費の節減や新型コロナの感染拡大の状況に応じた事業展開など、企業が自社社員の働き方や社内の管理モデルを変えて生産を維持するなど自助努力を奨励している。ハノイ中小企業協会のマック・クオック・アイン副会長は、このような企業側の努力に加え、「今年から来年いっぱいまでは、土地の賃借料や企業法人税の免除などの措置に加えて、中小企業による銀行からの借り入れを簡単にしたり、返済計画を見直したりするような施策を、国が承認すべきだ」と訴えている。

◇資金調達をより容易に

ベトナム社会政策銀行のハノイ支店によると、今年の8月17日現在、同行は、2279人分の賃金として計100億ドン以上を企業経営者らに融資しているという。これ以外にも従業員支援として延べ8937人がローンを借り入れており、その総額は395億ドンにのぼる。企業に対しては、生産性や事業収支などの評価を見直して返済期間を延長しているほか、利率の引き下げや免除措置もとった。さらに、より条件のよい借り入れ計画や融資を受けやすい利率も提示している。

専門家らは、この困難のさなかにあって、「企業支援につながる効果的な政令や政策を積極的に打ち出した」とハノイ市当局を評価している。しかしながら、これらの政策を企業の存続と成長につなげるためには、行政当局がそれぞれの企業の課題を見極める必要がある。ハノイ中小企業協会のマック・クオック・アイン副会長は、「政策は正しいものだが、企業はその運用や適用にてこずっている」と話す。制度として、銀行の融資利率引き下げや支払い期間の延長が存在しても、企業の事業を存続させるためには、早期に資本融資が受けられなくては意味がない。「企業がこれらの優遇措置が受けるための条件を、早期に、明確にすべきだ」というのがアイン副会長の考えで、中小企業の支援団体や企業連合などに声を上げ続けるよう呼び掛けている。

ハノイの経済界は、政府や地方の行政当局などが歩調を揃えて、積極的に問題に関与していくことで、企業は生産と事業活動を安定させることができ、資本をめぐる課題解決にもつながると信じている。