チュオンハイ自動車軸に製造業が伸展 クアンナム省、新たな成長モデルに

ベトナム中部、クアンナム省で、製造業が目覚ましい発展を遂げている。自動車の組み立てや生産大手のチュオンハイ自動車(Thaco)社を軸に、自動車部品やスペアパーツ製造などに特化した工業団地がベトナム最大規模へと成長。機械工学、裾野産業など製造業の幅広い分野へと広がり、地域の発展を後押ししている。

◇大規模生産チェーンの構築
ベトナム中部各省における製造業とすそ野産業は、クアンナム省のチューライ経済開放区(OEZ)を中心とした5カ所の工業団地が中心的役割を果たしており、自動車の部品製造や原材料供給の重役を担っている。さまざまな優遇策が提供されているチューライ経済開放区では、チュオンハイ自動車の製造工場を中心とした「チューライ・チュオンハイ自動車工業団地」が、ベトナム最大の自動車工業の産業拠点へと成長している。同工業団地の23社が、自動車パーツや部品の製造などに従事している。

中核となる自動車メーカーのチュオンハイ自動車(THACO)は、ベトナム最大規模の自動車組み立て製造企業として世界の自動車メーカーからの出資を受け、チューライ経済開放区発展の原動力へと成長している。同時に、チュオンハイの存在が、複雑な部品やパーツ類の製造設計や、近代的な高度技術を要する機械工学のすそ野産業への誘致のきっかけともなっている。

ほかにもクアンナム省は、チューライ板ガラス社、ドンタム・セラミックタイル社などの製造業や、恵まれた自然環境を生かす観光プロジェクト分野で、リゾート開発のインドシナ・キャピタルやビクトリア社、ゴールデンサンド社、パームガーデン社などによる開発プロジェクトが投資を集め、持続可能な開発の基礎が形成されつつある。

◇多機能な産業拠点へ
クアンナム省は、中央高原地帯の中心地である地の利を生かし、さらには国境を接するラオスやカンボジアなどとも同調し、密接に連携して、インフラを共有する一大経済圏にまで成長している。

ベトナム南部各省とホーチミン市の企業に拠点を構える機械製造産業とすそ野産業の発展をテーマにこのほど、オンライン会議が開催されたが、この場で、クアンナム省人民委員会のレ・チー・タイン委員長は、「チューライ・チュオンハイ自動車工業団地のおかげで、一帯が環境に配慮した、多分野にわたる製造拠点として投資を集めている」などと、現状を説明。さらにタイン委員長は、「クアンナム省は、一帯の機械工学系の製造業各社に対して、世界的バリューチェーンへの参加を目指すよう勧めている」と強調した。

チュオンハイ自動車のチャン・バー・ズオン会長は、「クアンナム省だけでなく、ベトナム中部地域における多目的な機械工学系拠点となることが、チュオンハイグループの使命だ」と話す。実際、チューライにおけるチュオンハイ自動車グループは、機器や製造設備だけにとどまらず、国内最高のエンジニアや熟練工を抱え、労働力の質の面でも、国内最高の機械製造拠点へと成長している。

同社では、自動車の製造組み立てにより積極的に取り組めるよう、周辺の機械工学とすそ野産業をさらに発展させたい考えだ。そのために、部品を輸入に頼らず、現地化調達率を高め、国内外の市場のニーズを満たすことが必要だ。チュオンハイ自動車は、部品製造業などの地域産業がチュオンハイとともに発展することが、国内製品のコストを削減し、クアンナム省の産業開発戦略を推進する原動力になると期待している。このような事業モデルは、まだベトナムでは新しいが、今後、チューライ・チュオンハイ自動車工業団地が世界的なバリューチェーンへと成長するきっかけになると期待できそうだ。