ハノイ市、国営企業の民営化一時棚上げ 透明性や効率確保を優先

国営企業の民営化が加速されるなかで、首都・ハノイ市は国営企業の民営化計画を一時棚上げする考えを示した。「国営企業が提供する財やサービスの重要性」をその理由として挙げており、民営化の前に、まずは国営企業が効率化や財務体質の改善を徹底して行うよう求めている。

ハノイ市人民委員会のチュー・ゴック・アイン委員長は、「ハノイ市が首都としての政治的任務を果たすためには、公共の財とサービスを提供する企業の資本を市が100%保持する必要がある」との考えを示した。また、これらの企業が安易に株式会社化されたり、民間に売却されたりすることがないよう、市として提案していることを明らかにした。

◇利益性の高い国営企業の実現を
国が全株式を保有する企業は、教育や医療、文化スポーツなどの社会コミュニティー向けのサービス提供をはじめ、上下水道や街路灯などの整備、灌漑、環境衛生などの公共事業を担っている。ハノイ市人民委員会によると、2016~2020年の5年間のハノイ市の国営企業の税引き前利益は、総額約8兆6540億ドンに達したという。

2016~2021年の時期を対象としたハノイ市の国営企業の再編と株式会社化について、同市人民委員会のアイン委員長は、対象となっていた国営化企業に債務や財務、資産の処理を許可。ただし、ハノイ市が株式会社化後の土地利用計画を策定し、これまで非効率に利用されていた家屋や建物、土地などは市が回収するとした。

ベトナム政府は、株式会社化のほか、国が保有する株式の売却などによって、2020年までに、100社余りの国営企業の再編民営化を実現する計画だった。しかしながら、国有企業の抱える財務処理や、所有する土地不動産などに絡む課題が解決できていないために、計画は大幅に遅れている。株式会社化や資産売却などに関するメカニズムや政策が、実際に実行に移されるときに困難な課題を浮き彫りにするということもあった。

◇企業ごとに計画策定を
ハノイ市には今年年初の段階で、国が100%株主である国営企業が27社あり、総資本は約22兆ドンにのぼった。また、一部株式を所有する企業も29社あった。

同市人民委員会のチュー・ゴック・アイン委員長は、2021~2025年を対象とした国有企業再編と売却計画について、市として、2016~2020年に浮き彫りとなった課題を徹底して解決した後に、計画を継続して実行に移すという方針を示した。具体的には、企業ごとに民営化に向けた計画や青絵図を策定し、公共性と透明性、最適な効率を確保していくという。

特に、住宅や土地施設などの管理と利用の分野で、課題が山積したり、財政困難に陥ったりして、課題解決までに長時間を要している企業に対しては、市は民営化計画を棚上げし、まずは問題解決を図ることを提案。課題解決後あらためて、2021~2025年の国営企業再編と売却計画に着手するよう求めた。

市側でも国営企業の土地資産をはじめ、企業資産と全般的な能力について再点検し、無駄を省き、土地の有効活用を図るなど、協力していくという。