赤ザオ族の集落でホームステイを ハザン省ソングエン村

息を飲むような雲海や棚田が広がるハザン省のソングエン村。その豊かな観光資源を地域経済に生かそうと赤ザオ族が暮らすナムホン集落で、ホームステイを中心としたコミュニティ・ベースド・ツーリズム (community based tourism : CBT)の取り組みが広がっている。地域密着の滞在型観光は人気を呼び、新たな収入の柱として期待される。

同省の中心部の ホアンスーフィー県から南へ約40㌔。棚田や茶畑の広がる山間にひっそりとたたずむナムホン集落は赤ザオ族の37世帯が暮らし 地域色豊かな伝統文化を継承している。竹筒で炊いたごはんや野生のコイ、未熟米のもち米、肉と野菜のスパイシーなスープなど、野趣あふれる郷土料理もその一つ。中でも、ナムホン特製の未熟米のもち米は、かつてVIPだけに供された貴重な一品という。

ホアンスーフィー地方では昔から、水田でのコイの養殖が盛んで、コイ料理も収穫シーズンの旬の一皿として知られる。コイは害虫を食べ、雑草を枯らし、米の受精を促す。ナムホンのコイの養殖は近年、農家の家計を潤し、貧困対策の面でも成果を上げている。


笑顔で観光客を迎えるトリュー・メン・クィエンさんの家族


記念撮影をするホームステイの外国人観光客

滞在型観光が人気
ナムホン集落では2015年、融資をもとに4世帯が住居を改装したり寝具を購入したり、宿泊環境を整えて観光客の受け入れを始めた。赤ザオ族の民家にホームステイするCBTモデルは軌道に乗り、村人の収入改善にもつながった。大人数が宿泊できる家も10軒に増えた。うち1軒で観光客を受け入れているトリュー・メン・クィエンさんは「融資の助けがあって、家の修理や調度品を揃えることができた。料金は、1人当たり食事込み30万ドン(約1700円)で、新型コロナウイルスの流行前には、年間700人が宿泊した」と話す。

別の宿泊施設を営むトリュー・ムイ・リューさんは、「需要の増加に合わせて11部屋のある別棟を設けた。ホームステイによって月300~400万ドン(約1万7000円~23000円)の収入がある」と話す。CBTモデルは、ナムホンを含め、北部山岳地方の村々の収入改善と持続的発展の新たな手段として注目されている。