中部沿岸地域のクアンガイ省に広がるサフィン塩田の製塩業者らが、塩作りの文化をテーマにした地域密着型の観光づくりに力を入れている。地元では数年前から、高品質の塩の製造販売をするなど、地域資源を生かした持続可能な発展に取り組んできた。地域の一部は今年、サフィン国家特別遺産にも認定された。
写真㊤=クアンガイ省のサフィン塩田を見学する小学生ら。地域では、教育と観光を2本の柱に、持続可能な発展を目指している(写真はすべてSAHU提供)
クアンガイ南部に位置するサフィン塩田は110㌶。19 世紀以降の仏植民地時代には、欧州の塩の供給源となっていた。約3000 年前のサフィン文化を今に受け継ぐとされる歴史ある地域でもある。
塩田の広がるタンジェム村では、ツアーの一つとして高品質の塩作り体験を提供している。体験を通して製塩の歴史や海辺の経済の成り立ちを学習してもらおうという試みだ。地元の製塩会社で40年間にわたって塩作りに携わってきたグエン・ティンさん(60)は現在、サフィン地域観光組合でフィールドガイドとして働く。
地元の生産者とともに、製塩の様子を見学する観光客
「塩の手作りには通じていますが、それをことばで紹介するのは初の挑戦。とても新鮮な毎日です。訪れた人たちに興味を持ってもらえるよう、製塩業者が天日干しによって、いかにして海水を塩の結晶にするかを説明しています」とティンさん。「国内だけでなく、海外のマーケットへの進出を図る意味でも、観光客に製塩体験をしてもらうことは大切な仕事。多くの人が村を訪れてくれることが、伝統製法を守っていくことにつながります」。
タンジェム村のホームステイサービスで漁網の作り方を学ぶ少女
ティンさんの家は3代にわたって塩づくりにたずさわってきた。「今、村の製塩業者の半数が、プラスチックシートを使わず、地面を使った昔ながらの製法に回帰しています。オーガニックな手法にすれば付加価値は高くなり、収入が30%増えます。最良の塩は、高価な商品になるということです」と話す。
「ソルトフラワー」(表面結晶化した塩)から竹筒で調理した塩まで。付加価値の高い17の製品を輸出向けに製造、販売するユニット、サフ(SAHU)の創設者、ファム・ホン・タムさん(30)は「われわれの商品は単に塩だけではなく、塩の村の人々の暮らしや、何世代にもわたって継承されてきた伝統文化そのものです」と力を込める。そのうえで、「観光と教育は、地元の農家により多くの価値をもたらしてくれることになるでしょう」と期待を寄せている。
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VNLオリジナル 2013年9月01日