ドゥオン・ラム(Đường Lâm)古代村は、ハノイ市中心部から約50キロメートル離れたハノイ市郊外のソンタイ(Sơn Tây)にある。“ベトナム最古の村”といわれ、2006年には国の文化的史跡に認定された。ハノイ旧市街と並び、北部紅河デルタの特徴的な建築や芸術を伝える村として、人気の観光地だ。(VNL ハノイ)

ドゥオン・ラムへは、ハノイ市内のミーディンのバス停発の71号バス、キムマー発の70号バス、ハドン区のバスターミナル発の77号バスが出ており、ソンタイまで行くことができる。運賃は、1万4000ドン(700円)ほどだ。

車を利用するなら、国道32号線またはタンロン大通りを行けば、ハノイ市中心部から約1時間。32号線で、ドゥオン・ラムの案内看板が見えたら、もうすぐだ。歴史・文化・自然の豊かなこの村への入り口では、水田に稲が青々と茂っていた。

厳密にいうと、ドゥオン・ラムは行政区ではなく、現在のモンフ村、ドン村、カム村、ティン村、ドアイザップ村、カム・ラム村にまたがる一帯で、同じ風習や文化を継承している地区だ。ドゥオン・ラムの西方と西北方は、バヴイ県のカムトオン村に接する。北へいけばもうビンフック省で、こちらは紅河の流れが省の境界となっている。

一帯の独特な風習のひとつとして、ゴングというものがある。村の古井戸や神社、お寺などの貴重な木材を再利用し、鯉の形に彫った木魚のようなものだ。これが打ち鳴らされると、音を聞いた村の人たちは、それを合図に集まっていたという。

村の神社も、神社の前の敷地=写真㊦=を周りの敷地よりも低くした、独特の様式で建てられている。こうすると、雨が降ると、雨水は神社の前の敷地に自然と流れて来る。常に水があることが、縁起がいいことだと考えられているからだ。


雨水がたまった神社前

この地は、「聖人・偉人の出身地」とも言われている。

トラと戦って勝つほど強く勇敢だったといわれるフウン・フン王(Phùng Hưng)はこの地の生まれだ。フウン・フン王は西暦791年に、ベトナムに攻め込もうとした中国のドゥン族と戦って、勝利した。その後、フウン・フン王の神社が、ドゥン・ラムのカム・ラム村に建立された。観光地でもあるが、学生や子どもたちがよくここに歴史を勉強するために訪れる。


フウン・フン王をまつる神社。たくさんの小学生たちが校外学習で訪れていた

また、983年に中国の南漢の侵略者を退けたゴクエン(呉權)王もこの地の出身だ。南シナ海に面したハイフォン市とクアンニン省にまたがるバックダン川で、チーク材から作った鋭い杭を使って戦ったと伝わっている。王の神社と墓も、ドゥン・ラム古代村の丘に建立され、今でも人々に熱心に拝礼されている。


ゴクエン王の墓と王をまつる神社=写真㊦

村を有名にしているもう一つのものは、古民家だ。一帯の多くの家々は、鉄とアルミ質を含むこの地の土壌から作ったレンガや貴重な木材などを材料に使い、300年以上も前に建てられたものなのだ。


村には多くの古い家々が並ぶ

ドゥオン・ラム古代村の主要産業は、農業だ。長く稲やとうもろこし、サトウキビや野菜などを栽培してきた。特産品としては、餅を砂糖やショウガなどで味付けし、ガックフルーツやお茶の話から色をつけたお菓子、チェラム(Chè Lam)=写真㊦=が有名だ。

また、焼いた肉と豆、緑豆から作られた独特の醤油、トゥオン(Tương)もある。この醤油は、粘土製の大きな瓶に水を注いで豆を浸し、発酵させて作るものだ。


豆からつくる醤油、トゥオン。家々の前には大きな瓶が並んでいる

村では、とれた農作物をこのような食品に加工し、自給自足で暮らしてきた。ドゥオン・ラム古代村は、長い歴史を継承し、ベトナムの民族性を伝えている。ここでは、時間がゆったりと流れているようだ。ハノイから日帰りで楽しめるので、ぜひ足を伸ばして訪れてみてはいかがだろうか。


おばあさんが、村の農産物や加工食品を売っていた