ベトナムは、中国を除く国々の中で、いち早く新型コロナウイルスの脅威を認識し、感染拡大を抑える政策を講じた国の1つだ。報告された感染者数の少なさは、その政策の成功を示している。現在政府は、パンデミック対策に資源を投入するとともに、収束後の景気回復に向けた取り組みも開始している。

■強力な対策実施
1月末、ベトナムや近隣諸国が旧正月を祝っているときに、すでにグエン・スアン・フック首相は、新たに発生した疫病に宣戦布告を行い、「疫病と戦うことは敵と戦うことだ」と政府の閣僚たちに語った。

首相指示(15/CT-TTg)を発出し、新型コロナウイルスの感染を防ぎ、制御するために、思い切った強力な対策を実施するよう求めた。20人以上の集会やイベントの中止を命じるとともに、公共の場における宗教儀式や文化・スポーツ・レクリエーション活動を厳しく制限した。

また、オフィスや学校、病院以外で10人以上が集まることを禁止し、公共の場では人々が互いに2メートル以上の間隔をあけるよう求めた。さらに、感染拡大地域から他の地域への移動を制限し、食品や必需品の販売を除いて、必要でないサービスの停止を要求した。

その上でフック首相は、国民に対し、人が集まる場所を避けて、家で過ごすこと。必要な場合のみ外出し、こまめに手を洗い、公共の場ではマスクの着用を要請した。

■首相が方向性指示
政府は、新型コロナウイルスの予防と感染拡大防止にあらゆる資源を総動員するとともに、景気回復策にも特別な注意を払っている。3月27日、フック首相はハノイで会議を開催し、同月31日に行われる政府と地方自治体との電話会議に向けて、4つの主要課題を議論した。その課題とは、貿易と生産活動の課題克服、公共投資の加速、無給休暇や失業が拡大する中での社会福祉の確保、新型コロナウイルスへの対応における社会秩序と安全の確保の4つである。

併せて、フック首相は、「新型コロナウイルスの感染拡大が終わりに近づくと、ただちに経済を回復させ、稼働させるため、その準備に取り掛かる必要があるだろう」とも語った。

首相は、財政、金融、社会保障政策について明確な方向性を提示。財務省に対しては、支援策の見直しを継続し、法人税などの減税、新型コロナウイルス対策に向けた資源の拡大、不必要な定期支出の削減について、国会常務委員会に報告するよう求めた。

さらには、金利の引き下げや、賃金を支払うための無利子融資のための措置を促した。消費者信用については、フック首相は商工省の提案に同意し、同省とベトナム国家銀行が連携して、強力な景気刺激策のための具体的なメカニズムを見出すよう指示した。

首相は、国民に冷静さを求め、政府の政策に信頼を置くよう呼びかけるとともに、すべての国民が感染症を予防し、撃退する「兵士」となるよう求めた。