石炭から新エネルギーへシフト エネルギー10カ年計画

政府は、新たなエネルギー10カ年戦略計画を打ち出す。石炭から太陽光や風力など、新たなエネルギーへの移行に力点を置いている。地球温暖化や環境への対策、民間活力の導入推進などが背景にある。

化石燃料の限りが見えるなか、増加の一途をたどる電力需要に対し、国家としていかに取り組むか。2021年から30年のエネルギー開発計画(PDP8)では、主要な電力網開発の規模や、電力の安定供給する新たなエネルギー源開発の道のりを示す。

PDP8戦略環境アセスメント(SEA)の初会合で、専門家らが環境負荷を分析。11年から20年を計画年度とする現在の(PDP7)では石炭火力発電に重点が置かれた。このため、国内の東海岸には風力や太陽光といった潤沢なエネルギー資源があるのにもかかわらず、石炭を輸入するという結果につながった。しかし、商工省の予測によると、石炭プラント事業の慢性的な遅延もあって、電力需要は、2023年までに供給を5%上回る。

ベトナムエネルギー協会のグエン・チェ・チャン代表=写真㊤=は、「ベトナムの電力産業は今、急速な変革期にある」と話す。そのうえで、「国内にあるエネルギー源をしっかり活用するというPDP 8への取り組みは、新エネルギーの潜在力の評価や気候変動、環境破壊の緩和対策、民間活力の導入策につながる」と説明。また、SEAについて、「電源開発による環境負荷を評価するうえでの必須の行程で、温室効果ガス排出基準や大気汚染の影響、風力や太陽光発電がその土地に与える影響を調査するというだけではなく、国際標準への対応という意味合いもある」。

PDP 8が効果を発揮するためには、エネルギー開発が利益を生み、投資家にとっても魅力的な事業とならなくてはならない。この10年間、優遇措置もあって風力発電の登録件数は急増。しかし、優遇策の対象期間はほぼ終了した。エネルギー協会では、水力発電における揚水発電装置のような追加的な電力貯蔵システムについて研究している。チャン代表は「計画が実現するかどうかは、電力市場にかかっている。商工省電気調整局は、投資家をひきつけるような価格メカニズムや決定方法を発表することになるだろう」と話す。

一方、電力事業からインフラ工事まで手掛けるチュンナムグループのグエン・タム・チェン・ジェネラルディレクター=写真㊦=は、「計画では、長期的なバックアップ容量も計算に入れておかなくてはならない。太陽光や風力に加えて、液化ガスによる補完も考慮すべきだ」と指摘する。

エネルギー協会傘下の環境持続開発局のグエン・チ・チュ・フェン代表は、「SEAの調査と評価は、発電によって生じる廃棄物の利用可能性など、追加的な課題を提議することになるだろう。不用な灰とスラグの埋め立ては今、多くの難問に直面している」と話す。

また、「環境保護や国家資源の保護には、承認を得たり手続きをしたりするのに長い時間がかかり、それがエネルギープロジェクトの進捗に大きく影響することもある。こうした要求にこたえる素早い国の仕組みや指針づくりもまた必要になってくるだろう」と指摘している。