ベトナムの自動車産業発展はばむ輸入部品 国産価格の高さがネック

ベトナムが近年、育成に力を注ぐ自動車産業。だが、ベトナムで組み立て・製造される自動車の缶製品価格は、タイやインドネシアなどの近隣諸国での組み立て車と比べて10~20%割高だという。ベトナムの自動車産業の規模が小さいこと、すそ野産業の発展が十分でないこと、部品やコンポーネントの製造価格が高いことなどが、その理由だという。

◇国内市場の競争力引き上げを
ベトナム自動車工業協会(VAMA)では、2025年にはベトナム国内での自動車販売台数は年間100万台超を目指している。その時までには、ベトナム国内での自動車部品調達率45%に伸ばし、さらに2030年にはそれを70%にまで引き上げたい考えだ。

ただ、現状は厳しい。自動車のガソリンタンクのキャップ1つの仕入れ値段は、ベトナム国内で3.8ドル。それに対して、同様のタイ製品だと、わずか1.5ドルで手に入るという。ベトナム産の自動車部品コストが高いのはプラスチック製の部材でも同じことで、タイの2倍、3倍にもなる。ベトナムでは、輸送コストを含めても、国産よりも輸入部品の方が、比較にならないくらい安価なのだ。

ベトナム自動車工業協会のグエン・チュン・ヒエウ企画部長はいう。「これが意味するのは、現状では、『ベトナム国産の部品や部材の使用を増やすことが、自動車組み立てを行う企業にとって全くメリットがない』ということだ」。

VAMAが先月3日発表した資料によると、ベトナムの自動車製造会社が2019年に国内で組み立てた自動車の販売台数は約40万台だった。人口がベトナムより3割も少ないタイが、自国内で製造組み立てを行い、販売した100万台に、遠く及ばない数字だ。商工省工業生産局のルオン・ズック・トアン副局長は、「ベトナム国内では、自動車の自国製造を支援する能力がまだ低く、自動車メーカーの要求水準にも達していない」と、指摘する。

ベトナム国内の自動車製造・組み立て企業は、エンジンや制御システム、ギア部品などの主要パーツの80%を、海外から輸入しているのが現状だ。さらに、組み立てた自動車は、東南アジアの他の国々からの同車種の輸入自動車と比べても、価格が10~20%も高くなる。

ベトナムの自動車製造・組み立て産業は、近年、目覚ましい飛躍を遂げ、フォードやメルセデスベンツ、トヨタを含めた40社以上の名だたる自動車メーカーが拠点を置いている。モーター部品などを製造するエコベトナム社のファム・バン・トゥアン社長は、「ベトナム企業は、自動車のさまざまな部品や部材を製造する技術は、すでに保持している」と太鼓判を押す。「ただ、実際に製造するとなると、同等の輸入品と比べて割高となってしまうのが現状だ」と指摘する。

◇求められる柔軟な関税
自動車の金属部品を加工するタインコン社の幹部は、「ベトナム国内のすそ野産業は、ワイパーや風よけ部品、バッテリー、タイヤ、ワイヤーなど製造加工に高い技術が必要ない部品だけを任されている」と話す。その他の部品やアクセサリー類は、依然として輸入に依存しているという。

この状況を打破しようと、ベトナム政府は、国内の自動車産業を支援し、成長を加速させるために、2017年以降、関連分野の企業に5億ドルもの税金還付を行っている。

しかしながら、部品や原材料などの現地調達率を引き上げるには、企業が投資戦略を立てて、輸出もできるようなパーツや部品や部材などを製造し、ベトナムが東南アジア地域の、そして世界の部品供給源となる必要がある。ベトナムすそ野産業協会(VASI)では、「その実現のためには、政府が安定した関税政策を採用し、輸出向けの部材や部品の製造を積極的に奨励するほか、企業自身も地域や世界の部品供給を担うバリューチェーンに加わることを目指すべきだ」と指摘している。

経済専門家らは、輸入部材に柔軟な関税方針を適用することが、ベトナム国内の自動車産業の発展には重要な要素になると指摘する。自動車製造・組み立て企業らは、当局に対して、行政手続きの簡略化、特に関税通過のための手続きの簡略化を進める一方で、国内で生産できない部品については税制の優遇を行うよう求めている。さらに、外資系の自動車メーカー各社に対して、ベトナム市場に参入するさいに、ベトナム企業に対して技術供与や素材に関するノウハウなどを供与するようよびかけている。