「一村一品運動」成果の一方で、品質管理などになお課題

地域の特産品を生かして農村の経済発展を図る「一村一品(OCOP)運動」は、家庭や企業の生産力向上、収益拡大に貢献している。農業農村開発省は、続く2021~25年期も、地域の利点や条件を踏まえ、バリューチェーンを意識しながら「一村一品商品」を開発していく方針だ。

■市場拡大にも貢献
同省で新農村開発を進める中央調整局によると、2020年10月時点で、48の省と市が一村一品商品の評価に参加。これまでに2169商品が3つ星以上の評価を受けており、2018~20年期の目標の90.4%に達した。紅河デルタ地域が712点(3つ星以上の商品の32.8%)で最も多く、北部山岳地域の497点(同22.9%)がこれに続いた。

全体の格付けでは、1405点(同64.8%)が3つ星、716点(同33.0%)が4つ星、5つ星の可能性がある商品が48点となった。現在、全国レベルのOCOP協議会が、12の省の提案に基づき、5つ星の可能性がある商品を評価している。

2019年以降、多くの地方自治体は一村一品商品をPRするセンターを立ち上げ、見本市や会議を毎年開催して、商品の需要と供給を結び付けている。これらの商品は、VNポスト、Voso.vn、ラザダといった電子商取引プラットフォームや、セントラルグループ、イオン、サイゴンコープマート、MMメガマーケットなどのスーパーマーケットチェーンの店頭にも並んでいる。

農業農村開発省によると、一村一品運動は成果を上げており、様々な地域で多くの商品がその価値や品質を証明し、徐々に一村一品商品のバリューチェーンが形成されている。生産や収益の増加、市場の拡大にも貢献しているという。

国の一村一品運動の評価対象となった商品のほとんどが、10~40%の売上高伸び率を示している。多くの商品は、消費者の動向や市場の需要に合わせて、高級感があり価値のある贈り物として販売するために、革新や改良が加えられてきた。

■一貫性のない支援方針
こうした成果の一方で、一村一品運動には多くの課題がある。例えば、一部の自治体は、運動の期間が2018~20年であるのに、2020年しか承認しなかった。また、多くの自治体では、一村一品運動の目標や方向性が正しく理解されておらず、商品開発をより困難にしている。

支援方針や仕組みに一貫性がないため、実施段階において自治体に混乱や困難をもたらした。分類や評価基準には実用的でないものもあり、さらなる調整や補足が必要だ。多くの一村一品商品にはまだ弱点があり、特に品質管理、包装、ラベル表示、知的財産に関する規制適用に課題がある。

農業農村開発省は、今後2021~25年の期間も、地域の特性を生かしたバリューチェーンへのアプローチ、一村一品商品を管理・監視するシステムの構築、貿易促進活動の推進などを継続していく方針だ。また、前処理における技術的なサポートを実施し、代表的な原材料農産物地域も開発していく。

これらの目標を達成するために、同省は各自治体に対して、一村一品運動が参加者や農村地域にもたらす経済的な影響を総合的に評価するよう要請。2021~25年期に向けて、課題や困難を見直して利点を明らかにすること。特に山岳地域の評価商品の品質向上を継続すること。地域ブランドや少数民族の文化的価値を活用し、贈り物や観光土産品としての一村一品商品を創出することを求めた。

ベトナムの一村一品運動は、日本やタイの「一村一品運動」をもとに、農業農村開発省が2008年から始めた。農村部の経済発展施策であり、国家目標である「新しいスタイルの農村建設」の一環として実施されている。