コロナの影響受けた企業、政府、銀行、社会保険機関が支援

ベトナムにおける新型コロナウイルスの感染拡大は、全国約60の省と市に急速に広がり、経済活動に深刻な影響を与えている。ベトナムの企業は、生産や貿易面などの様々な困難に対処するため、政府による適切な支援策を求めている。感染拡大により、多くの企業が生産停止や閉鎖を余儀なくされている。

◇税制面での支援
政府は新型コロナの影響を受けた企業に対し、電力価格を10%引き下げることを決定した。また、政令第52/2021/ND-CPでは、2021年の付加価値税や法人税、国有地賃料の納期延長を決定。それを受けて省や市は、企業に対する税や賃料の支払い期限を3~5カ月延長した。さらに、税務当局は、遠隔地や隔離地域にある企業の納税申告や確定申告の提出期限も延長した。

写真㊤=企業には、感染抑制、生産維持を目的とした支援策が適用される

サイゴンハイテクパークのレ・ビック・ロアン副所長は、「私たちは感染抑制、生産の維持、社会保障の確保ために、企業に対し、労働者が寝泊まりできる一時的な宿泊施設を手配するよう指示した。また、保健当局と連携してパーク内の多くの企業の医療スタッフに新型コロナに対応したトレーニングを実施するとともに、労働者に必要なワクチンの量も推計した」と話す。

◇銀行、社会保険機関の取り組み
大部分の銀行は、ベトナム国家銀行(SBV)の指示を受けて7月から年末までの間、パンデミックによる被害が大きかった企業の貸出金利を引き下げることで合意した。この合意は、7月11日に開催されたSBVと16の銀行との会合で決定した。

SBVの指示に従って、ヴィエティンバンク(VietinBank)では、コロナで大きな影響を受けた顧客に対する年間貸出金利の1%引き下げを継続するとともに、銀行の資本を活用した優遇信用サービスも提供している。同行の企業への支援額は、今年下半期には2兆ドン(約97億)を超え、2021年通年では6兆ドン(約290億円)を超えるとみられる。

ベトコムバンク(Vietcombank)では、年末までの間、すべての顧客を対象にローン金利を引き下げる。この措置は、すでに優遇金利の対象となっているローン、証券・不動産投資向けのローンには適用されない。ベトコムバンクの支援額は今年、6兆1000 1,000億ドン(約293億円)に達する見込み。

また、テクコムバンク(Techcombank)は昨年から引き続き、優先分野の貸出金利を年4.5%以下に、重要な経済分野の貸出金利を年6~7%程度に引き下げている。同行は、労働集約型の企業や経済に不可欠な企業を中心に支援を行っている。

SBVドンナイ省支店のファム・クオック・バオ副支店長は8月、「SBVは継続して事態を注視し、信用機関に対し、債務返済の繰り延べや金利の免除・引き下げなど、パンデミックの影響を受けた企業に対し速やかに支援を行うよう指示する」と述べた。

一方、社会保険業界では、労働災害や疾病関連の保険料の引き下げ、退職金・遺族基金への支出の一時停止、研修の実施や雇用維持の支援などを行っている。ベトナム社会保険機関(Vietnam Social Security)の指導をもと、省や市の社会保険機関は、従業員への支援策の実施について雇用主へ指導を行う運営委員会を設置した。

ホーチミンビジネス協会のファム・ゴック・フン副会長は、「政府や関連機関は、企業がパンデミックを乗り越えるために、さらに強力な支援策を打ち出していく必要がある」と指摘している。