ベトナムの不動産、活況の兆し

ベトナムの不動産市場におけるM&A(合併・買収)は今年上半期より回復し、取引量も取引高とも増加することが期待されている。

計画投資省の統計によると、今年前半の海外直接投資は前年同期比1%増の570億㌦だった。不動産分野は大半がM&Aで、10%増となった。

目立った取引としては、ホンコン・チャイナズ・ツン・シングループは今年1月、モーヴェンピック・サイゴンホテルの53%の株式を購入。また、韓国のリーディングカンパニーのロッテマートは事業拡大のため、大型ショッピングセンターのピコプラザを買収した。

ホーチミン市の投資計画局によると、サン・ワー・ベトナムグループは国内投資プロジェクトのベイウォーター計画への参加を決めた。また、バイ・ロン・リゾート計画にイスラエル投資家が3億㌦を出資、名称をアルマリゾートへと改めた。

ホアン・アー・ジア・ライは今年5月、ホーチミンのドン・ナム計画から手を引くこと発表、計画がヒム・ラム・カンパニーに引き継がれることになった。このほか、PPIがウォーターガーデン計画をダ・ザン・グループに売却したことなど、国内のM&Aも投資家から注目されている。

不動産の回復と流動性の向上は、市場を刺激し続けてきた政策の結果でもある。加えて、企業が負債削減のために不動産と開発計画を売却していることなどが背景だ。

結果的に、いくつかのM&Aは、首尾よく取引がまとまっている。インフラ事業や、主要都市間の交通網整備が、不動産市場をより魅力的なものにしているようだ。

明るい見通し
ベトナムの経済成長が確実視されていることもあり、不動産市場におけるM&Aも、急速に増加すると期待されている。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)合意後は、海外からの直接投資もより容易になるだろう。

「宅地でのアパートや住宅開発などでも今後も多くのM&Aがあるだろう」と話すのは不動産会社、サヴィルズ・ベトナム(Savills Vietnam)の投資担当者、ス・ゴック・クォン氏。投資家はローリスクで安定した利益が期待できる既存の不動産にも関心を寄せている。一方、国内や海外からの旅行者の増加を受け、都心やビーチ、リゾートの開発も進められている。ベトナム各地の空港への海外からの直行便が増加したことも追い風となっている。

クォン氏は「過去2年間において、巨大プロジェクトに貢献してきた日本と韓国の資本は今後も増加するだろう。さらに、シンガポールと中国、台湾の住宅、オフィスへの投資もまた増加するだろう。この2つの分野への関心は来年も続くだろう」と予測している。