知的所有権の周知キャンペーン 4月、ベトナム全土で展開

ベトナム科学技術省は、4月26日の「世界知的所有権の日」を前に、1カ月にわたる知的所有権保護のPRキャンペーンを展開してきた。環太平洋経済連携協定(TPP)加盟を視野に入れ、知的所有権の社会的周知と偽造品の一掃を目指す。

写真㊤=キャンペーン開幕で演説するチャン・ヴィエット・タイン科学技術省副大臣

キャンペーンは、知的所有権保護の支援活動を展開する国際的NPO、「ビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA)」(本部・アメリカ)の支援を受けて展開。4月の1カ月間、各地でPR活動などを展開している。TPP加盟後は、知的所有権の扱いで世界各国と足並みをそろえることを求められることから、ベトナムでもこの分野に対する注目が高まっていることが背景にある。

開幕式典において、科学技術省のチャン・ヴィエット・タイン副大臣は「ベトナムは、市民の知的所有権に関する法律認識を深め、知的所有権者の権利を保護していくことが必要だ。このことは、社会全体でTPP加盟を準備する意味でも、ベトナムの社会的経済的発展や生産性向上などのためにも重要なことだ」と述べた。

キャンペーンは4月の1カ月間で、この分野の社会教育や周知活動を展開。さらに、5月以降も、実際の知的所有権の侵害事案の摘発など、法律適用を強化していくとした。これには、知的所有権保護活動に社会全体がかかわるとともに、管理団体などが率先して保護と理解、社会的普及を行うよう促すねらいがある。これを契機に、各メディアでの知的所有権に関する記事や報道が増えることで、知的所有権の正当な保持者である個人や企業が自らの知的所有権の保護に関心を払い、さらには消費者が正しい知識をもつことでベトナムの繁栄と発展に貢献することをねらう。


開幕式典には、実働部隊となる省庁を横断したメンバーが参加した

ここ数年間のベトナムにおける知的所有権保護の強化は、国家レベルから地方行政自治体レベルに至るまで、連携して展開されている。科学技術省のチャン・ミン・ズン行動委員会委員長が開幕式典後の会合で発表した統計データによると、2013-2014年にかけて、同省の調査官や特別監察官、警察、税関、その他関係省庁、地方自治体などで計32474件の知的所有権侵害事例を摘発し、金額ベースで約1390億ドンの罰金を科した。同時に、万個単位で模倣品やニセの登録商標、容器やラベル類などの廃棄処分を行っているという。

また、文化・スポーツ・観光省のチャン・ヴァン・ミン調査次官の発表によると、コンピューターソフトの著作権保護を強化しており、2014年だけでも、同省調査官がコンピューターソフト所有法にもとづいた企業コンプライアンス遵守のチェックなどを82社で行ったのを含めて、121件の聞き取り調査が行われ、違反による罰金総額は15億7000万ドンにのぼっているという。

知的財産権を監査し、規制にあたってきた当局の努力は報われつつある。例えば、検査や処罰は、知的財産法の違反防止に、教育、広報、抑止力の観点から重大な効果を発揮している。また、正当な著作権者、消費者、そして社会全体の利益保護にも大きな役割を果たし、より健全なビジネス環境の創造を助け、投資と改革を集めている。

BSA・アジア太平洋コンプライアンス・プログラムの、ローランド・チャン・シニアディレクターは開幕式典で「ベトナム政府による数年来の知的所有権保護への強い努力と進歩を高く評価しています。とくに、コンピューターソフトの分野においては目覚ましい進展があった。ベトナム政府のこれらの行動は、サイバーセキュリティーの危機管理とともに、外資系投資企業などとの信頼構築といった挑戦において、重要となってくる」と述べた。さらに、チャン氏は「知的財産権の保護活動は、特にベトナムのように世界で市場拡大を図っている新興国経済にとっては、困難で果てしない作業である。政府の行動とは別に、関係団体や各行政機関、さらには社会全体での努力が必要である」と付け加えた。