ヘリコプター輸送を展開するベトナムヘリコプターの支社、南ベトナム ヘリコプター会社(Southern Vietnam Helicopter Company=VNH サウス)は、今やベトナム国内のみならず東南アジアのリーディングカンパニーへと成長した。安全運航を続けて30年。同社の発展を支えるのは、パイロットをはじめとする経験豊かなスタッフと、徹底した訓練からもたらされる質の高いフライトだ。

空のプロフェッショナル集団
1979年1月31日。グエン・チャン・チュオン機長の操縦する登録番号779のUH1ヘリが無事、掘削船「ダン・クイーン」に着陸し、ベトナムのヘリサービス業の歴史に、記念すべき第一歩を記した。その後、1985年3月11日のフライトの成功を機に、ベトナム政府は、石油、ガス掘削基地支援のため、後のベトナムヘリコプター社となる「石油ヘリ会社」の設立を決定。2012年、南航空サービス会社はVNH サウスに改編され、ベトナムヘリコプター社の支社として再編された。

設立当時の機材といえば、軍払下げのMi-8(ミル8)が2機だけで、操縦士や整備士も経験不足だった。機材不足から、さまざまな難問に直面することもあった。それから30年。現在、同社はAW-189やEC-225、スーパープーマ L2、EC-155B1、MI-172、MI-17などの充実した機材を運用。国際基準の滑走路やエプロンなどの地上施設も完備し、ベトナム国内のみならず、東南アジア地域でのリーディングカンパニーの一つとなった。ここにいたるには、社員のたゆまぬ努力と情熱があった。

年間フライト15000時間
同社の自慢は、過去30年間にわたる計25万時間以上の安全運航だ。この記録を支えているのが質の高い人材だ。5000時間以上の飛行時間を誇る経験豊かな操縦士40人を抱え、うち20人の飛行時間は1万時間を超えている。彼らの多くは非常に高度な技術を要求される石油、ガス基地へのフライトもこなす。さらに、技術者チームもロシア、ウクライナ、仏など海外で訓練を受けている。

こうした優秀な人材と充実した設備によって、同社は数多くの企業向けフライトを安全に運航してきた。現在、1日30回、計数百人の乗客を乗せ、年間15000時間のフライトを行っている。

乗客や貨物を運ぶだけでなく、VNH サウスのパイロットは、たとえば石油やガス基地の吹き出し口を交換する作業(2010年4月のクーロンJOC 、2014年6月のプレミア・オイル)など、非常に難易度の高いミッションにも成功している。

さらに、ヘリコプターのリースや操縦士を派遣することでヘリコプターサービスを“輸出”。ノルウェーやマレーシア、東ティモール、インドなどにも進出し、海外市場も開拓してきた。こうした取り組みは、同社に2700万㌦(約32億円)の収入と、世界的な評判をもたらした。

VNHサウスは、ビジネスとともに、VIPを運ぶスペシャルフライトや海軍のパイロット養成、海洋防衛など、国防面でもさまざまな任務に就き、そこでも安全性を証明してきた。

すべては安全のために
安全性に対する国際的な評価を維持するため、同社は人材開発に注力している。創業時にまず取り組んだのが、会社にとって人材強化が、いかに重要であるかを理解することだった。創業当初の1986年、パイロットと整備士たちは訓練のためにフランスに送られた。

1995年にも、国際基準のフライトニーズを満たせるように6人のパイロットを現地で訓練した。ここでの経験が、その後の国内での訓練の基礎となった。同社は、現在も操縦士や整備士、その他大勢のスタッフに対し基本訓練と応用訓練を実施。原則、シンガポールや英国、米国、仏など海外での訓練も行っている。

ベトナムの航空法に定められている厳しいルールを守り、石油、ガス会社の高度な要求に応えることができるよう、人材開発に余念のない同社だが、サービスの近代化、多様化にも投資している。2014年8月にはEC-225ヘリをエアバス・ヘリコプターから納入。今年11月にはツインエンジンの新型ヘリ、AW-189をアグスタ・ウエストランドS.P.Aから納入する予定だ。

30年にわたる運航において、同社は東南アジアのリーディングカンパニーになるべく、たゆまぬ努力を続けてきた。その偉大な業績とヘリ業界に対する功績から、ベトナム労働英雄称号のほか第二、第三位独立メダルなど、人民委員会や政府、官公庁から多数の表彰を受けている。こうした高い評価は、同社が世界に向けてさらに発展していくうえで、大きな励みとなっている。