「神戸牛」ゆずりのベトナム産牛肉、発売へ

「神戸牛」と同じ種から育て、飼育方法にもこだわったベトナム産高級牛肉が、中部高地のラムドン省(県)で6月、出荷される。値段は1㌔あたり350万~500万ドン(約2万8000円)で、本家同様、庶民には“高値の花”となりそうだ。

神戸牛は、厳格な品質管理のもと、一定の条件を満たしたものだけが名乗ることができる高級牛肉。「神戸ビーフ」「神戸肉」と呼ばれることもある。米国のオバマ大統領が日本で食べたいものとして挙げるなど、いまや世界的に有名なブランドとして認知されている。飼育の過程で、ビールを与えたり、マッサージをほどこしたり、音楽を聴かせたり、人間並みの贅沢な環境で飼育している業者もおり、そうしたエピソードも話題となった。

このブランド牛肉のDNAを受け継ぐ高級牛をラムドン省のバオ・ラム地区、タン・ラク村の農場で飼育するのがベトナム・コウベ・ビーフ社だ。同社が地元紙に語ったところによると、同社は日本とベトナムの協力事業として2009年に設立。精子を米国から輸入し、第1世代として、地元の牛たちと一緒に飼育した。2011年には、オーストラリアやタイなどから生後120日の牛を購入。現在、12~26カ月の第1世代の牛100頭を飼育している。

牛は、寒い気候に適応した品種のため、高温なベトナムの気候に不慣れで、環境への適応には気をつかった。品質管理の点からえさにも十分な注意をはらい、つぶしたコメやカンショの搾りかす、大豆かすといった毎日のえさに加え、ビタミンなどのサプリメントも欠かさず与えている。さらに、牛をリラックスさせて、食欲を増進させるために毎朝、えさやりの前に、クラシック音楽を流している。

生後間もない30~40㌔前後の牛は、体重や健康診断を受けた後、一頭ずつ誕生日や血統、性質などが記述されたIDカードが付与される。800~1000㌔の成牛になるには32カ月を要する。

同社の担当者によると、第1世代の牛は6月にラム・ドンで販売されるが、将来的には、ハノイやホーチミン市といった大都市でも販売されることになるという。処理されるのは5~10頭で、一頭あたりの肉の供給量は300~400㌔。このため、牛肉は限定販売となる。

同社は、農場拡大のために400億ドン(約2億2000万円)を投じたことも明らかにし、来年には900頭の牛を保有するようになる見込みという。現在、同社は牛を最初の4カ月だけ飼育して、26カ月に成長するまでの世話を委託するビジネスモデルを計画。牛はその後、同社が再び引き取り、肥育してから市場に送り出すという。