メコンデルタの気候変動関連被害で コメの品種改良要請 フック首相

今月半ばにメコンデルタを視察したグエン・スアン・フック首相は、一帯での水不足や塩害などの農業被害を受けて、カントー市のクーロンデルタ(メコンデルタ)稲研究所で専門家らと会合し、気候変動に順応した稲の品種改良を急ぐよう呼びかけた。

写真㊤=クーロンデルタ稲研究所での意見交換で発言するフック首相
フック首相は、「この40年間でベトナムが世界でも有数のコメ輸出国に成長したのは、クーロンデルタ稲研究所の果たした功績が大きい」と同研究所の努力を称えた。

しかし、干ばつや塩害で100万トンものコメ生産に損害が生じ、ベトナム、特にメコンデルタ一帯に悪影響を及ぼしていることから、「気候変動に順応できるようなコメの新品種の開発や、従来品種の改良を進めてほしい」と要請した。また、「科学的な研究と市場の要求を組み合わせ、農家や関連企業とも情報交換しながら、技術の発展や移転を加速させ、良質なコメの新品種を開拓してもらいたい」と求めた。

同研究所のグエン・ホン・ソン所長は、同研究所の研究の結果、165種ものコメの改良品種がうみ出されていることを紹介し、今後も努力を継続することを約束。生産量が大幅に高まった品種、通常の栽培日数(120~130日)よりも短い期間(90~105日)で実る品種などのほか、病害に強いものや塩害、洪水などへの耐性を持つ品種などをフック首相らに紹介した。

また、同研究所では関連機関と協力し、干ばつや水田への塩水の侵入、塩害などを最小限に抑えるような技術を紹介するパンフレットを約2万部作成した。地域の農業関係者らに配布するなど、独自の取り組みも進めているという。

ベトナムの穀倉地帯であるメコンデルタは、国内のコメの生産量の約半分、海産物の約70%を産出し、その売上高はベトナムのGDPの約3分の1に相当する。だが、メコン川の上流部での開発も加わり、ベトナムで気候変動や自然環境の変化の影響が最も大きい地域の一つとなっている。

メコンデルタの気候変動関連被害に関しては、世界銀行が先日、塩害や沿岸部の浸食、洪水といった自然災害で被害を受けたメコンデルタ各省の住民120万人の生活の維持と立て直しのため、約3億1000万ドルの融資を承認している。