蒸し暑い夏の日、ハノイのとある小道を通ると、小さなフラワーポットを吊した緑の装飾を目にするだろう。コウザイ区のチャンビン通りのハンギング・ガーデン。実はここが、過去10年もの間、ごみの不法投棄場所だったということを知る人は少ない。

プロジェクトは、アカデミー・オブ・ジャーナリズム・アンド・コミュニケーションの学生、ダム・タン・チュンさんによってはじめられた。そもそものきっかけは、若者を対象に地元のテレビ局VTV6が開催したアイデアコンテストだった。

「このゴミ置き場を、花の咲き誇る庭に変えることができるか─。こんなチャレンジングな課題を、主催者が私に課してきたのが出発となった」と、チュンさんは振り返る。材料には、環境にやさしいレンガと地元の人が提供したペットボトルが使われた。

「私の目的は、地域の人々に環境保護の意識を高めてもらうことでしたが、ごみ置き場が花や緑のあふれる美しい庭に生まれ変わると、もはや、ここにごみを捨てる人は誰もいなくなった」とチュンさん。そして、「アイデアが実現したのは多くの人の協力のおかげ」と感謝する。

実際の現場作業はわずか5日間で終わり、その後、管理は地元の行政にゆだねられた。チュンさんは、同様のハンギング・ガーデンを市内にもっとたくさん作りたいと思っている。

チュンさんは、「ガーデンには特許や著作権もないので、どんどん地域のコミュニティーが引き継いでいってくれれば」

地元住民のコミュニティー代表者のグエン・タン・ナムさんは、行政が同地区に同様のガーデンを作ると約束したという。「ガーデンができて以来というもの、みんなが大いに植物の世話をするようになった。みんなが順番で水やりをし、枯れた植物の植え替えもしている」

「手押し車を押す行商人らも、ハンギング・ガーデンを気にかけてくれるようになり、花を抜いたり、盗んでいく人があれば、教えてくれる」

行政も、プロジェクトを高く評価。より多くのハンギング・ガーデンを作り、このエリアのすべての通りを花で満たしたいとしている。取り組みは、他の地区にも広がりつつある。ドンダ地区のタイハ通りのごみ置き場も、すでに花のガーデンへと〝変身中〟だ。

地域の若者グループは、リサイクルのペットボトルにさまざまな花を植える取り組みを始めている。「こうした取り組みは、住民たちが周囲の環境を改善していくうえで、とてもよいアイデアだと思う」。近くで、草花の水やりを買って出ているル・ビッ・タホさんは話す。

民間企業、ハノイ都市環境のグエン・フー・チェン総務部長は、「ハノイで市は、都市の衛生や環境を維持するため、すべての個人や組織に働きかけている。最初の一歩は、『ごみを通りにすてないで』ということを、より多くの人々に意識にしてもらうことだろう」と話している。