世界的に展開するスペインのファッションブランド、ZARA(ザラ)が9月8日、ホーチミン市にベトナム初となる店舗を開業した。ベトナムのファッション業界にとって刺激となる一方、国内のブランドとの競争も予想され、業界は大きな関心を示している。

ベトナムで初となるZARAの店舗は、ホーチミン市中心部の商業施設、ビンコムセンター・ドンコイの一角に開業した。

ベトナムのファッション好きな人たちにとって、ZARAは数年前から人気の高いブランドだ。だが、これまでは、商品を購入するには外国から注文し、為替レートに悩まされ、高い送料も払わなければならなかった。それだけに希少価値があったのだが、ZARAが国内で購入できる身近なブランドになった今、引き続きベトナムの人々の関心を集めていられるだろうか?

ベトナムのカジュアル服のデザイナーや業界関係者の多くは、ZARAがベトナム市場に参入したことを「新しい機会とチャレンジ」と、前向きに受け止めている。


モデルのタン・タオさんら有名人もZARAの1号店を訪れた


試着室の前では連日、長い行列ができている。

ZARAをよく利用していたという歌手のイエン・チャンさんは、ZARAのベトナム参入について「これまでは、ほとんどがアクセサリーの購入だった。でも、ウェブで注文するかわりに店舗で直接購入できるようになるので、洋服も買い求めやすくなる。いっときはZARAブームが生まれるのではないか」と話す。

「ZARAのベトナムでの展開により、ベトナムのファッション市場が多様になると思う。でも、最近のベトナムのファッション業界は多くの新しいブランドが生まれており、値段も手ごろで、それぞれ特徴があるので、ベトナムのブランドがZARAに負けてしまうことはないと思う」と話した。


歌手のイエン・チャンさん

ホーチミン市で人気のデザイナー、ラム・トゥイ・ニャンさんは、自分の手掛けるファッション製品が50万~100万ドンくらいで、ZARA製品と価格帯や購入者層が重なるというが、「影響は心配していない」と言う。

知名度の高いZARAブランドが市場に参入することで、ベトナムのファッション市場全体が活性化することの恩恵の方が大きいからだ。「国内ブランド間での競争は厳しくなるが、それはいい刺激になると思う。自分のブランドを買う人が減る心配はしていない。私のブランドには、私にしか出せない特徴がありますから」と自信を見せる。


デザイナーのラム・トゥイ・ニャンさん

一方で、ZARAが開業した日に店を訪れたというデザイナーのケルビン・レイ(Kelbin Lei)さんも、「2階建ての大きな店舗で、女性、男性、子どものファッションがすべてそろっており、製品が多様。商品のデザインも斬新で、値段も手ごろだった」と感想を語り、「低価格で、注目と信頼が厚いZARAのような国際ブランドと、ベトナムのカジュアルブランドとの競争は、今後激しくなるだろう」と予想した。


デザイナーのKelbin Leiさん